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水ノ上成彰は堺市西区選出の堺市議会議員。

TEL. 072-263-0333

〒592-8348 堺市西区浜寺諏訪森町中3丁272-2

堺市議会報告 議会発言集CONCEPT

平成20年6月17日 大綱質疑

一般質問《新型インフルエンザ対策について》

◆3番(水ノ上成彰君) (登壇)皆様、お疲れさまです。プロジェクト堺の水ノ上です。私の方からは、通告に従って一般質問を行います。内容は、強毒性新型インフルエンザ対策についてでございます。よろしくお願いいたします。
 現在、世界じゅうで、強毒性H5N1型鳥インフルエンザの人への感染が拡大しています。2008年4月現在、世界14カ国で380人が鳥 インフルエンザに感染し、240名が死亡、その致死率は60%を超えています。この鳥インフルエンザが近い将来、人から人に爆発的に感染する新型インフル エンザへと変貌を遂げ、世界じゅうに大流行するパンデミックを引き起こすのではないかと各国の政府が強い危機感のもと、対策を急いでいます。
 インフルエンザは単なる重い風邪ではなく、地球最大規模の人獣共通感染症であり、ウイルスが極めて変異や交雑を起こしやすく、数十年間隔 で新型インフルエンザが大流行するのを防ぐことはできません。20世紀では3回、新型インフルエンザが出現しました。1918年に世界的に大流行したスペ インインフルエンザ、いわゆるスペイン風邪、1957年に大流行したアジア風邪、1968年に大流行した香港風邪、これらのインフルエンザはすべて鳥イン フルエンザウイルスに起源を持っています。その中で、20世紀最大の被害を及ぼしたのは、ちょうど今から90年前の1918年、大正9年から大正11年に 大流行したスペインインフルエンザで、このインフルエンザは、弱毒性にもかかわらず、全世界で大きな被害をもたらし、5,000万人から1億人、日本でも 40万人から45万人の人命を奪いました。弱毒性のインフルエンザは、呼吸器と消化器の局部感染にとどまりますが、強毒性インフルエンザは全身に感染し、 多臓器不全、全身性の重症疾患をもたらし、死亡率も非常に高くなると予想されています。
 スペインインフルエンザを初め、過去のすべての新型インフルエンザが弱毒性であったのに対し、近い将来、大流行が予想される新型インフル エンザは強毒性の可能性が高く、人類が初めて経験するものあり、パンデミックを起こせば、その被害ははかり知れません。90年前の世界の人口が18億人 だったのに対し、現在は63億人と約3倍になっており、高速大量輸送を背景に、新型インフルエンザが出現すれば、わずか1週間で世界じゅうに伝播すると言 われており、オーストラリア、ロウィー研究所によれば、全世界で数千万人から3億人、日本で210万人が犠牲になるとされています。
 大正9年のスペインインフルエンザは、日本上陸後、約3週間で広まりました。堺も例外ではなく、例えば歌人与謝野晶子氏一家も11人の子 どもの1人が小学校でインフルエンザに感染してきたところから、家族全員が次々と倒れました。当時の堺の記録は余りありませんが、与謝野晶子氏は、インフ ルエンザが広がる中、政府の対応の悪さ、鈍さを新聞紙上で酷評しています。なぜ、政府は大呉服店、学校、大工場、大展覧会等多くの人間の密集する場所の休 業を命じなかったのでしょうかと怒りをあらわにしています。郵便、電話、鉄道は麻痺し、食糧、熱さましの氷は数倍の高値になり、火葬場では遺体を処理し切 れず、苦労した記録も残っております。
 このようなことから、堺でも当時相当の被害があったと思われますが、90年前のスペインインフルエンザによって、大阪や堺でどれだけの市民が犠牲になったか、まずお尋ねいたします。
 WHOによれば、パンデミックは起きるかどうかが問題ではない。パンデミックは必ず起きる。問題はいつ起きるかだ。我々に今どれくらいの 時間が残されているのか全くわからないという見解でございます。アジアのある国では、人から人への感染が限定的ではございますが、既に確認されており、一 刻も早く対策を立てないといけない時期に来ていることは確かです。新型インフルエンザ流行後の有効な対策として、ワクチンの接種が考えられますが、発生し てからワクチンが国民にわたるには、最低6カ月かかります。まず感染を防ぐことが非常に大切な対策となります。
 そこで質問いたします。新型インフルエンザに対して、現在どのような対策が練られているのか、医療体制、危機管理体制両面からお答えをください。
 以上で第1回目の質問を終わります。
 

◎健康福祉局長(谷口清治君) スペイン風邪による堺市における被害状況につきましては、詳細な資料はありませんが、大阪府においては2万人以上が死亡したと推計されております。
 続きまして、新型インフルエンザ対策についてお答えいたします。
 新型インフルエンザとは、人類が経験したことのないインフルエンザウイルスが出現し、人から人へ感染する能力を持ったことにより、世界的 大流行を起こし、生命の危機的な状況をもたらすものであります。国においては、平成19年3月に新型インフルエンザ対策専門家会議により、医療サービスと 社会機能を維持し、被害を最小化するためのガイドラインが示され、抗インフルエンザ薬についても、都道府県とあわせて備蓄が進められており、府では既に 72万人分の備蓄が完了しております。
 一方、本市においては、新型インフルエンザ対策として、各関係課が事前対策について相互に協議し、連絡調整を図り、総合的な対策を推進す ることを目的として、平成18年2月に新型インフルエンザ庁内連絡会議を設置しております。今後は、国のガイドラインに沿って、本市としての実効性のある マニュアルを策定してまいります。また、新型インフルエンザが発生した場合は、初期の封じ込みが非常に重要となるため、直ちに保健所が中心となり、対策本 部を設置し、疫学調査班を編成するとともに感染の拡大防止を図ります。新型インフルエンザ対策は、本市のみならず、府を含めた近隣の自治体との協力体制が 不可欠であります。このことから、大阪府及び大阪市などと対策について共通認識を持って推進していくための意見交換を行ってきたところです。
 また、平成18年度には共同で鳥インフルエンザ発生を想定した訓練を実施し、ことしの2月には、新型インフルエンザ発生を想定した訓練を市立堺病院、衛生研究所も含め実施したところでございます。
 今後、大阪府が中心となって府下の医療体制の整備等さまざまな問題に取り組むため、大阪府新型インフルエンザ対策協議会を今月中にも設置 することとなっております。本市としましても、引き続き大阪府、医療関係団体などと連携を図りながら、新型インフルエンザ対策について取り組んでまいりま す。以上でございます。

◎市長補佐官(時本茂君) 次に、新型インフルエンザ発生前後の体制についてお答えをいたします。
 鳥インフルエンザの発生、または鳥インフルエンザから変化した新型インフルエンザの疑いが見受けられる段階では、保健所が中心に調査等情 報収集を行ってまいります。また、状況に応じまして危機管理センターを設置して、全庁的な初動対応を図ってまいります。さらに、新型インフルエンザである との確認がされた場合には危機管理対策本部を設置し、あわせて国や大阪府、関係団体とも連携をして、感染者の早期発見や市内での流行予防、感染拡大を防ぐ ための全市的な対策を行うこととなります。特にこの新型のインフルエンザに関しましては、爆発的な流行を抑え、健康被害を最小にとどめる迅速な対応が必要 であるため、より具体的な対応マニュアルの策定を早急に行いまして、被害の拡大防止対策を講じてまいります。以上でございます。

◆3番(水ノ上成彰君) 議長。

○議長(辻宏雄君) 3番水ノ上成彰議員。

◆3番(水ノ上成彰君)  ご答弁ありがとうございました。90年前のスペインインフルエンザによる大阪の犠牲者は、ご答弁では2万人、文献では2万7,000人を超えるというも のもあり、人口比から推測いたしますと、堺市の犠牲者は二、三千人に及ぶと考えられます。太平洋戦争時、米軍による堺空襲で犠牲になった堺市民は約 1,800人ですから、スペインインフルエンザの犠牲者は、それに匹敵するということがわかります。
 さらに、現在心配されています新型インフルエンザがパンデミックを起こせば、どれだけの対策をとるかにもよりますが、堺市民 の犠牲者は数千から数万人と予想され、堺史上最大の被害、犠牲者を出すおそれがあります。新型インフルエンザ対策として発生以前、発生時、流行後と各段階 において、それぞれ緊急事態に厳しい政治決断が求められるのは必至です。新型インフルエンザとの戦いは、見えないウイルスとの戦いであり、医療の問題の側 面だけではなく、危機管理の問題としてとらえる必要があります。
 さて、このような被害状況が予想される中、堺市の対策はいかがなものでしょうか。ご答弁では、平成18年2月に新型インフル エンザ庁内連絡会議を設置したということですが、以後、2回会議を実施したのみで、平成19年3月以降、1年3カ月間開かれておりません。連絡会議設置と 同時に、新型インフルエンザ対策基本マニュアル素案が提示されておりましたが、これも以後2年以上、進展がございません。堺市には現在、新型インフルエン ザ対策マニュアルができておりません。これは危機が声高に叫ばれる中、怠慢と言ってもいいのじゃないかと思います。
 今、もし世界で新型インフルエンザのパンデミックが起これば、90年前の日本政府同様、全く打つ手なく、多くの感染者を市中 に発生させ、多くの犠牲者を出すことにならないか、非常に心配です。対応マニュアルの策定は早急に行うというご答弁でしたので、これ以上申し上げませんけ れども、これを本当に急いでいただきたい、このように思います。
 さらに申し上げれば、新型インフルエンザ庁内連絡会議の座長は保健所の所長で、すなわちドクターであります。医師として適切 な対応ができても、危機管理として庁内をまとめていくのに適切なのかという疑問もございます。ご答弁では、堺市の事前の備えとして、主に医療面の充実に重 きをなしているように思われますが、堺市全市で取り組まなければならない最大の危機管理事象であるということを認識する必要があります。
 日本政府の新型インフルエンザ対策は、アメリカより3年はおくれていると言われています。ご答弁では、国・府との連携を重視 していますが、もちろん、それは重要だと思いますが、動きの遅い国・府を待つことなく、堺市独自でできる対策を積極的に打ち出していく必要があると思いま す。
 例えばアメリカ政府は、国民に対して10日間の食糧・水の備蓄と流行時の行動制限とを示し、企業や教育機関との対応を勧告し ています。新型インフルエンザが出現した場合、何よりもまず、流行の第一波における被害を最小限に食いとめることが重要なのは言うまでもありません。流行 の初期段階では、行政は患者の隔離、入院勧告、疑わしい患者や接触者の検疫や停留などの措置をとる必要があります。また、人と人の接触を極力防ぐため、学 校閉鎖、登校禁止、出勤自粛、自宅待機、不要不急の集会の自粛、交通機関の使用制限などの市民の自由を一時的に制限することや、また行動も制限をすること を決断する必要があります。市民に外に出るな、家で待機せよと呼びかける政治的決断をしなければならない。それをいつするか、そういうことも議論が必要で す。
 特に教育委員会の責任は重大だと思います。子どもたちの命を守るために、どの時点で学校園の閉鎖を行うか、登校禁止を決断す るか、新型インフルエンザが日本に上陸した一報をもって、すべての学校園を閉鎖し、登校を禁止する必要があると私は思います。また、こういうことについて は、教育委員会においても、これから十分に議論されていくことだと思いますが、一日のおくれも許されることではありません。
 家での籠城が感染を防ぐ最も有効な手段となります。そのためには、平素より市民に理解を求めた上、最低10日、できれば1カ 月程度の飲料、また食糧の備蓄を勧告する必要があります。地震対策として食糧・水の備蓄をしている人は多いですが、せいぜい3日分です。地震の場合は、被 害が局地的なため、3日以内には必ず救援舞台が被災地に入りますので、それ以上の備蓄は必要はありません。しかし、新型インフルエンザの場合は、世界じゅ うで同時多発的に流行するため、国外からはもちろんのこと、国内の他地域からの救援も望めません。ですから、最低10日の食糧・水の備蓄は地震対策とあわ せて、ぜひ市民に勧告をしていく必要があると思います。
 そのほかにもパンデミックを起こしていない今の段階で議論し、準備しておくことが山ほどございます。例えばライフラインをど のように確保するのか、市民に家で待機を促す以上、水道・電気・ガスなどのライフラインの確保は絶対条件になります。しかし、そこで働く人たちがインフル エンザで倒れればどうするのか。実際、90年前も起こった問題点です。また医師の確保、医師も真っ先に患者と接するわけですから、抗体ができていない以 上、医師に感染する可能性があります。また、小児科医の医師も特に確保は難しいと言われている中、そういうことも考えていく必要があると思います。
 また病院医療の確保、パンデミック後、感染者が病院に殺到することが考えられますが、病院が真っ先にインフルエンザに感染し て壊滅するおそれがあります。特に市立堺病院は、感染症指定医療機関ですから、インフルエンザの患者をまずここに収容します。しかし、市立堺病院はそれ以 外の患者もたくさんいます。そこから院内に感染が起こって、すべてがインフルエンザに感染することも考えられる。そういうことも議論していく必要がありま す。また遺体の処理、火葬場の焼却能力を超える場合、遺体を一時的にどこに安置するのか、また、一時的にどこかに埋葬する必要があった場合どこにするの か、そういうことも議論していく必要があります。
 また、ワクチンができるまでの抗インフルエンザ剤であるタミフルの備蓄ですが、ご答弁では、大阪府では72万人分の備蓄があ るということでしたが、これがどういうふうに配分されるかは不明です。例えば進んでいる品川区では、独自で3,000人分のタミフルを備蓄してるというふ うに聞きます。堺市でも大阪府に頼ることなく、独自で抗インフルエンザ剤のタミフルを備蓄する必要があるのではないか、こういうことも議論する必要がある でしょう。
 また、大きく問題となるのは、考えられるのは、命の優先順位ということであります。インフルエンザに感染し、死に至る患者数 が膨大に上った場合、それに対して医療機器や薬品、ワクチンの絶対数が不足する中、例えば新型インフルエンザは、重い肺炎を起こしますが、その肺炎患者に 人工呼吸器が必要となった場合、だれに人工呼吸器を設置して、だれに設置しないか、市立堺病院では30台の人工呼吸器があるということですが、それをだれ に設置して、だれに設置しないか、それをだれが判断をするのか。また、ワクチンが6カ月後できるとしても、一遍にできるわけじゃありません。優先順位とし て、だれに打つのか、だれに待ってもらうのか、そういうことを今のうちに議論していく必要があると思います。
 命の優先順位というこの重い判断をする場面、倫理的・人権的な配慮も考えてですね、平時にこれを議論しておかなければ、いざ 大流行してからでは、全く動きがとれません。パブリックコメントをするなり、日ごろより市民を交えた議論をするなりして、市民に納得いただく形で準備して おく必要があります。
 このようなことから、庁内連絡会議は今ございますが、それだけではなく、常設の新型インフルエンザ対策室を直ちに設置し、 トップに市長補佐官危機管理担当を充てるべきだと、このように私は提案をしたいと思います。新型インフルエンザが確認された段階で、この対策室を危機管理 対策本部にスライドさせればよいとも思います。発生までにどんな組織をつくっておくかが勝負の分かれ目、命が助かるかどうかの分かれ目だと、このように思 います。
 最後に、今までの新型インフルエンザ流行と違い、新型インフルエンザの流行にあたり、一つ幸運な点は、90年前とは違い、流 行のメカニズムがある程度解明され、流行時期もある程度予測できることから、事前の対策を十分にしておけば、犠牲を最小限にとどめることが可能であるとい うことでございます。各自治体の準備体制によって、各自治体にお住まいの方々の市民の犠牲者数が大幅に左右されることも考えられます。今すぐ万全な対策を とっていただいて、日本でも最も犠牲者の少ない市にしていただきたい。
 歌人与謝野晶子氏は、インフルエンザに倒れ、あすには自分も死ぬかもしれないと覚悟しながらも、病の床につきながら、それでも最期まで子どもたちのために生きたいと、次のように強い決意を新聞に表明しています。これをご紹介してきょうの質問を終わりたいと思います。
 流行性感冒に対するあらゆる予防と抵抗とを尽くさないで、むざむざと病毒に感染して死の手に搾取されるようなことは愚鈍とも 怠惰ともひきょうとも言いようのない遺憾なことだと思います。今は、死が私たちを包囲しています。あすは私たちがその不幸な番にあたるかもしれませんが、 私たちは、あくまでも生の旗を押し立てながら、この不自然な死に対して自己を守ることに聡明でありたいと思います。
 90年前の与謝野晶子氏の言葉ですが、今こそ、この言葉をかみしめていただいて、市長のリーダーシップのもと、83万堺市民の命を守るために、直ちに対策をとっていただくことを要望して私の質問を終わります。

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