◆10番(水ノ上成彰君) (登壇)プロジェクト堺の水ノ上成彰でございます。プロジェクト堺を代表いたしまして大綱質疑を行います。本日は通告に従いまして、5項目にわたってご質問をいたします。よろしくお願いをいたします。
《 新しい自由都市・堺ルネサンス計画》
それでは、早速質問に入ります。市長は来年4月の政令指定都市への昇格を前にして、新しい自由都市・堺ルネサンス計画骨子案を発表されました。また、初
日本会議において、市長は新しい自由都市・堺ルネサンス計画の重点施策として8項目に分けて表明されました。さて、新しい自由都市・堺ルネサンス計画とい
う言葉から質問をいたしますが、これからの堺市をアピールする上で、よく自由都市、自治都市という言葉が使われます。自由という言葉は、人により受けとめ
方がさまざまあると思います。この自由という言葉をどのような意味で使っておられるのか、まず最初の質問といたしまして、市長は新しい自由都市・堺とはど
のようなイメージを持ってお使いになられているのか、お答えください。
《歌人・与謝野晶子》
次の質問に入ります。市長お示しの新しい自由都市・堺ルネサンスという言葉のうち、ルネサンスという言葉ですが、ルネサンスとは、本来、学問・芸術など
文化上の革新運動、文芸復興を意味します。市長は、ルネサンスをもっと広い意味でお使いになられているようですけれども、ルネサンスという言葉を使う以上
は、文芸復興ということに力を注がれていかれるとお察しいたします。
そこで、文化・文芸に関連して質問をいたします。まず、本日12月7日は堺市にとって文芸上特別な日でございます。127年前のきょう、明治11年12
月7日は、さんが生まれた日でございます。きょうは、まさしく与謝野晶子さんの誕生日という記念する日でございますので、与謝野晶子さんについてご質問を
いたします。以下、敬称は略します。
昨年、平成16年11月1日に20年ぶりに新札が発行されました。既に1年がたちました。新5千円札には女性で初めて樋口一葉の肖像が載りました。この
新5千円札の肖像には、選考過程において、堺の誇る天才女性歌人与謝野晶子も候補に挙がっていたことはよくご存じのことと思います。このとき、もし与謝野
晶子が5千円札の肖像になっていたとしたら、堺市の知名度はどれだけ上がったかわかりませんし、堺市民もどれだけ誇りに思った想像にかたくありません。近
く、車のナンバーに堺ナンバーが採用されるということですが、5千札に与謝野晶子の肖像が用いられたとしたら、国民すべてが手にするということであり、堺
ナンバーの採用よりもはるかに高い効果があったことは間違いありません。個人的な見解ではありますが、歌人、詩人、思想家としての与謝野晶子は、当時、第
一級の人物であり、与謝野晶子こそ、5千円札の肖像になるにふさわしかったと堺人の私は今でも悔しく思います。
さて、与謝野晶子は天才女流歌人としてだれもが認めますが、その思想的な部分において、与謝野晶子ほど近年誤解をもって伝えられている人はいないと言え
ます。与謝野晶子の作品は歌が半分、政治評論及び社会評論が半分を占めております。大正、昭和前期の時代において、与謝野晶子に匹敵する思想家は日本に1
人としていなかったとも言われております。その時代において最も偉大な女性でありました。我々は歌人、詩人としての与謝野晶子を知るだけでなく、晶子の思
想についてももっとよく理解し、正しい晶子像を全国に発信していく必要があると思います。今回、市長が発表された自由都市・堺ルネサンス計画骨子案には与
謝野晶子の名はありません。ルネサンス、すなわち文芸復興という以上、与謝野晶子こそ真っ先に挙げねばならないと思います。
さて、そこでご質問いたします。与謝野晶子の代表作とされている「君死にたまふことなかれ」をどのようにとらえているのでしょうか。そのことも踏まえ、
堺市は与謝野晶子をどのように評価しているのでしょうか。与謝野晶子を今後どのように全国に発信していくつもりでしょうか。以上3点についてお答えくださ
い。
《税源の涵養と人口増加政策》
続きまして、税源の涵養と人口増加政策についてご質問いたします。
堺市の人口は、美原地域を除きますが、平成11年では79万6,000人余りで、平成17年9月では79万5,000人余りと、この6年間でわずかに1,000人減っただけでございます。しかし、その構成は大きく変化いたしました。
例えば給与所得者、いわゆるサラリーマンは、平成11年では27万1,000人いましたが、平成16年では24万8,000人と2万3,000人減少い
たしました。サラリーマン人口の減少により、堺市に住んでいるサラリーマンの給与所得の合計、すなわちサラリーマンたちが手にした給料の合計は、平成11
年で約1兆4,000億円あったのが、平成16年には約1兆2,000億円へと、5年で実に2,000億円減少いたしました。この所得の減少に伴い、個人
市民税は平成11年の406億円から、平成16年には330億円へと、約76億円減少いたしました。実に減少率は18.7%になります。個人市民税の減少
は、もちろん堺市だけの問題ではございません。政令指定都市は、すべて個人市民税が大幅に減少しております。ただし、この減少率はさまざまで、川崎市の
7.7%が最も低く、おおむね関東圏は1けたか、10%前後の減少率であるのに対して、関西圏の政令指定都市の減少率は高く、京都市が17.1%、大阪市
が17.8%、神戸市が17.4%となっています。堺市は18.7%と、政令指定都市、今はまだなっておりませんが、その中でも個人市民税の減少率は最も
大きい、このことはよく頭に入れておく必要があります。
税源の涵養と一口に言いましても、市税には主に個人市民税、法人市民税、固定資産税などがありますが、法人市民税は景気の回復により上昇に転じています
が、市税に占める割合からすれば、10%そこそこであり、ボリューム的には比較的小さいと言えます。固定資産税は、地価の下落により減少していますが、地
価の下落は直接的には市の政策により作用できるものではありません。このことから、税源の涵養として最も力を入れなければならないのは、何といっても個人
市民税の税収増をおいてほかにありません。具体的には、2万人の30代から40代の働き盛りの世代を堺に呼び込むこと、仮に年収500万円の30代から
40代の働き盛りの世代が新たに2万人堺市に定着したとすれば、年間1,000億円の所得税が見込まれ、30億円から40億円の市民税の増加が見込まれま
す。政令指定都市への移行により税源が移譲され、30億円から40億円の余裕財源が見込まれるとよく説明されますが、行革効果を評価しつつも、扶助費のこ
れからの増加見込みを考えますと、すぐにでも食いつぶしてしまうおそれがございます。歳入として30億円の税収がふえるのと、政令指定都市への昇格により
30億円の余裕財源ができるのとでは、決算書上は歳入の科目が違うだけで、内容は同じものとなりますが、効果は全く違うということはご理解できると思いま
す。
30億円の税収の増加は1,000億円の所得の増加が前提にあり、1,000億円の所得の増加は、仮に貯蓄率を5%としても、950億円の消費が行わ
れ、堺市内において景気が活性化いたします。現在の堺市の景気の低迷は、サラリーマンの減少により、総所得が減り、消費が減退していることによります。ま
た、30代、40代の若い世代が堺市に住めば、まちが若返り、活性化いたします。私はこれからの堺市の活性化のためには、今後、期限を切って数万人単位の
働き盛りの30代、40代の世代に移り住んでいただく必要があると考えます。個人市民税の減少率が政令指定都市中最悪の我が市においては、そのための思い
切った施策も進めていく必要があると考えます。
そこでお伺いいたします。当局は人口の増加及び税源の涵養につき、具体的にどのような目標を設定し、どのような施策を実施していこうとされるのかお答えください。
《教育問題》 ⅰ・学校選択制の導入について
さて、続きまして教育問題につきまして2点お伺いいたします。
1点は、教育の自由化という観点から、小・中学校校区の自由化、学校選択制の導入についてでございます。堺市内には95の小学校区、43の中学校区があ
り、現在、校区外の通学は認められておりません。小・中学校の校区の制定は、義務教育課程ならば、どの小学校、中学校で学んでも平等な等しい教育が受ける
ことができるということが前提になっております。しかし、同じ堺市においても、現状では荒廃して授業もまともにできない学校もあれば、学校全体がよくまと
まり、授業がきっちり行われている学校もあります。学校により、教育の入れ方に差が生じているのも厳然とした事実でございます。同じ堺市に生まれながら、
義務教育において教育を受ける環境の差は予想以上に大きなものだと認識しています。また、このような教育環境の違い以外にも、昨日、木村教育次長のご答弁
の中で、学校長の権限を拡大し、特色ある学校づくりをめざすとございました。特色ある学校が各地にできるのであれば、子どもたちが、その特色に合う学校を
選ぶようにする必要もあると感じます。校区による教育環境の格差は、実際に小・中学校に通っている子どもたち及びその保護者にとって大きな関心事であり、
非常に敏感な問題でもあります。
ある荒れている中学校の女子生徒は、学校で勉強したいけれど、授業中に徘回する生徒が多く、先生もその状態を制止できないため、授業をまともに受けるこ
とができない。クラブ活動もまともにできないと嘆いております。また、隣の学校では少人数制を導入しているので、うちの子どももその学校に通わせたいとい
う保護者もいらっしゃいます。保護者の中には、他の学校のよいうわさを聞き、その学校に通わすことができないか、いっそのこと、子どもの教育のために引っ
越ししようかと真剣に悩んでいる家庭もございます。本来、平等な教育を受けることを前提に設けられた校区制が、荒れて授業もできない学校から特色のある先
進的な学校まである現在では、かえって平等な教育を受ける権利を阻害しているのではないだろうか、このように思うわけでございます。
通学区域は法令上定められたものではなく、市の教育委員会によって決めることができます。堺市は来年4月より政令指定都市に昇格し、美原を含め7つの区
に分かれます。この政令指定都市への昇格を機に、各区内において学校選択制を導入したらどうか、全国的にも東京都の品川区など学校選択制を実施する自治体
も出てきました。品川区では1割の生徒が指定校以外の学校に通っていると聞いております。今後、このような自治体はふえてくるだろうと予想されます。進取
の気風を重視する堺市においては、少なくとも一部の区で学校選択制の導入の具体的な検討に入るべきだと思いますが、小・中学校の学校選択制につき、教育委
員会の見解をお聞きしたいと思います。
ⅱ・教師の人材の確保と質の向上について
次に、教師の人材の確保と質の向上についてお伺いいたします。
政令指定都市へ移行することにより、教師の採用は堺市独自でできるようになると聞いております。教育の質の向上は、教師の質の向上によります。優秀な教
師を多く採用すること、このことが堺市の教育委員会に課せられた大きな課題と言えます。現在では、大阪府が窓口で採用された教師が堺市で教職についている
わけでございますが、今後、堺市独自で採用ということになれば、よほど堺市の採用に魅力を感じることがなければ、堺市の教師の質の確保ができず、教育の質
が落ちていくことになります。大阪府の採用から堺市独自の採用へはすぐに変更されるわけではないと思います。例えばさいたま市を例に挙げますと、独自採用
に3年ほどかかっております。堺市も数年をめどに、教師にとって魅力のある教育の環境の整備をしていかなくてはなりません。
そこでご質問いたします。政令指定都市への移行に伴い、優秀な教員をいかに確保するか、そして教員の質をいかに高めていくかお答えください。
《人権条例と平和と人権資料館》
最後に、人権条例と平和と人権資料館についてご質問いたします。
市長の選挙の公約及び所信表明、またルネサンス計画でも、平成18年に人権条例を制定するとしており、条例制定のため、具体的な検討に入っていると聞き
ます。また、平成18年4月に平和と人権資料館がリニューアルオープンされます。この平和と人権資料館は、かつて偏向的な展示があり、問題視された資料館
でもあります。人権条例の制定にしても、平和と人権資料館のリニューアルオープンにしても、いわゆる人権の尊重という立場から進められていることと思いま
す。
そこでお伺いいたします。そもそも人権とは何でしょうか、この際改めて定義を問いたいと思います。また、人権条例については、なぜ、今この時期に制定を
するのか、制定にあたっての基本姿勢、基本の信条をお答えください。さらに、平和と人権資料館はどのような意図を持ってリニューアルされるのか、お答えく
ださい。
最後に、北朝鮮による拉致事件は最大の人権問題であり、国家の主権と人権を考える上で、現在の日本人に多くの示唆を与えるテーマであります。平和と人権
資料館に、北朝鮮による拉致事件の展示をすることは非常に有益であると思うことから、ぜひ展示をお考えいただきたいと思いますが、市民人権局のご見解をお
聞かせください。
以上で第1回目の質問を終わります。
○副議長(辻宏雄君) これより答弁を求めます。
◎市長(木原敬介君) (登壇)プロジェクト堺代表水ノ上成彰議員のご質問のうち、新しい自由都市・堺の考え方についてお答えいたします。
堺は、古墳時代には仁徳陵を初め百舌鳥古墳群が築造され、中世には海外交易の拠点として経済的な繁栄を遂げるとともに、茶の湯を初めとする文化を開花さ
せたところでございます。また、時の権力から自立して会合衆を中心にまちづくりが行われ、当時世界的にもまれな自由・自治都市が形成されました。近代にお
いては、我が国初となる民間鉄道や飛行場の開設、大浜での一大リゾートなど、堺から多くの新たな産業が生まれ、先進的なまちづくりが進められたところでご
ざいます。このように堺は長い歴史の中で、常に新しい時代を切り開いてきた都市であり、今日まで自由と自治、進取の気風の精神が脈々と受け継がれているも
のと存じております。
このたび、お示ししました新しい自由都市・堺につきましては、こうした歴史・伝統精神を現代に生かし、市民、企業の活力が自由な創意のもとでまちづくり
に発揮されることによって、活力と魅力あふれる堺の再生をめざしてまいるものでございます。今後、政令指定都市移行を推進力として、さらに行財政改革に取
り組むとともに、行政、市民が協働して自己決定、自己責任のもとで、今日における新しい自由都市・堺を築いてまいりたいと考えております。
なお、その他のご質問につきましては関係局長から答弁を申し上げます。
◎市長公室長(指吸明彦君) 与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」についてお答えをいたします。
ご承知のとおり、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」は、日露戦争のさなか、1904年の雑誌「明星」に発表されたものでございます。その直後、与
謝野晶子は同雑誌の中で、どのような立場の人でも、自分の肉親だけは生きていてほしいと願っており、肉親を思わない人はいない、その気持ちを歌ったのです
と、みずからの考え方を言及しております。我々としても、このような晶子の思いは承知しているところでございます。
次に、与謝野晶子の評価とその全国発信についてでございますが、与謝野晶子は、我が国近代を代表する歌人、文学者であるとともに、多くの分野で活躍した
堺の偉大な先人の一人であります。このような認識のもと、堺市立文化館、与謝野晶子文芸館の管理運営を行っているほか、与謝野晶子の歌碑めぐりを出版する
など、市内外への情報発信に努めております。また、平成9年以降、市民主体で設立されました与謝野晶子倶楽部とともに、与謝野晶子の顕彰に取り組んでいる
ところでございます。今後とも、与謝野晶子文芸館の展示内容の充実を図るとともに、同倶楽部とも連携し、与謝野晶子並びに晶子のふるさと堺の全国発信と顕
彰に努めてまいります。以上でございます。
◎市長公室理事(木戸唯博君) 人口の増加策と税源涵養についてお答えいたします。
少子高齢化社会、人口減少社会の中にあって、都市活力を維持向上していくためには、人口の定着化や市外からの誘引を図る施策が不可欠であり、そのことが
税源の涵養にもつながるものと認識しております。現在、市議会、市民の皆様のご意見をお聞きしながら策定作業を行っております自由都市・堺ルネサンス計画
におきましては、こうした考え方を勘案し、将来的な人口の見通しを示すとともに、議員ご指摘の若い世代の定住化や誘引に資する施策についても明らかにして
まいりたいと考えてございます。
具体的には、計画骨子案にお示ししておりますとおり、企業誘致による雇用拡充や中心市街地の活性化、民間主導による上質な住宅供給や地域拠点の形成な
ど、住みよい生活環境の整備に取り組んでまいります。また、保育所待機児の解消や乳幼児救急医療助成制度の拡充など、子どもを安心して産み育てることがで
きる環境づくりのほか、小・中一貫校や特色のある学校教育活動、放課後児童の活動を支援する子ども教育文化センターの設置など、子どもたち一人一人の個性
をはぐくむ教育を重点施策として位置づけ、住んでよかった、住んでみたいと思える魅力あるまちづくりをめざしてまいる所存でございます。以上です。
◎教育次長(亀井靖夫君) 教育改革についてお答えいたします。
本市におきましても、知・徳・体のバランスのとれた質の高い教育が行われ、安心し、信頼して子どもを任すことのできる学校を求める保護者、市民のニーズ
は年々高まってきておるところでございます。議員ご指摘の学校選択制につきましては、学ぶ主体である子どもの自主的精神や個性の伸長を図ることなど、各学
校で特色ある教育活動を展開し、学校教育の活性化を図ることが期待されております。今後、学校選択制の導入の検討にあたっては、特に登下校時の子どもの安
全確保や地域に根差した特色のある教育の推進等との関係についても研究してまいりたいと思うところでございます。
次に、教員の人材確保と資質の向上についてお答え申し上げます。
本年度より堺・学校インターンシップを立ち上げ、現在、18大学、75名の大学生が堺の教育を学んでおります。このインターンシップを通じまして、長期
間、定期的に学校生活を体験することで、採用後、現場でのより質の高い活動が期待できる人材を育成するとともに、この制度の参加者が是が非とも堺で先生に
なりたいという思いを強く持ち、堺の教員を志望するシステムをつくっていきたいと考えております。また、堺市の教員採用が始まることにつきましては、全国
の採用実績のある大学へ周知するなど、広くPR活動を展開し、教員採用の土壌づくりに努めているところでございます。
次に、教員の資質向上につきましては、教職員の評価育成システムや授業力アップを軸にした初任者研修、採用5年までのステップアップ教員研修等の取り組みをさらに充実させてまいりたいと考えております。以上でございます。
◎市民人権局長(番所護君) 人権とは何かという質問についてお答えいたします。
日本国憲法では、第11条で基本的人権の享有、第13条では個人の尊重、生命、自由、幸福追求の権利、第14条では、法のもとの平等を保障しております。人は生まれながらに自由であり、人間としてとうとばれ、幸せに生活する権利と認識しております。
2番目の人権条例の制定時期とそれについての基本姿勢でございますが、堺は中世より自由と自治の精神をはぐくみ、国内外の人々が行き交い、国際的な感覚
と自由な発想を取り入れた文化を生み出す平和で自由な都市として発展してきました。その間、平和や自由を脅かす幾度の戦禍にも、堺に暮らす人々は、不断の
努力によって復興をなし遂げてきた歴史を有しております。堺市におきましては、これまでもさまざまな人権施策に取り組んでまいりましたが、政令指定都市・
堺の新しい都市像として、これらの歴史と文化に根差して、この堺市から平和と人権のとうとさを訴え、みずから行動する平和と人権を尊重するまちづくりの実
現に取り組むことを基本姿勢として人権条例を制定するものであります。
3番目に、平和と人権資料館のリニューアルの意図でございますが、平和と人権資料館を開設いたしまして11年が経過しております。その間、社会情勢の変
化により、新たな人権課題も生起してきております。また、機器類等の老朽化に加え、障害者への対応が不十分となっております。戦後60年を迎え、戦争の悲
惨さを風化させることなく、平和のとうとさを訴え、何よりもお互いの人権や地球環境を守ることの大切さを市民とともに考え、次世代に継承していくために、
常設展示内容のリニューアルをいたします。
展示内容につきましては、平和、人権、環境の3つのゾーンに分け、堺らしさをアピールできるような展示の工夫をしてまいります。
4番目、平和と人権資料館に北朝鮮の拉致事件の展示ということでございますが、拉致事件について、平成14年12月24日、本市議会におきまして、北朝
鮮による拉致問題の徹底解明を求める決議がされております。拉致問題は人権侵害であると認識し、議会議決文をパネル化いたしまして、各支所、フェスタや堺
まつりといったイベント等に展示し、啓発してきたところでございます。平和と人権資料館のリニューアルにおいて、新たに製作する人権関連年表に決議が議決
されたことを掲示する予定でございます。また、議決文の全文については、人権擁護都市宣言、非核平和都市宣言文とあわせた資料を作成し、配架いたします。
以上です。
◆10番(水ノ上成彰君) 議長。
○副議長(辻宏雄君) 10番水ノ上成彰議員。
◆10番(水ノ上成彰君) ご答弁ありがとうございました。新しい自由都市・堺のイメージについて、市長みずからご答弁をいただきました。自由という言葉
に関して重要なのは、どうすれば自由を獲得することができるのか、また、だれにとって自由なのか、どのような自由が望まれるのかということだと思います。
会合衆は、当時の権力の及ばぬところで自治を行ってきたことから、堺市は自治のまち、自由のまちと呼ばれたのですが、それは何よりも巨大な経済力がそうさ
せたのであります。経済的な独立があってこそ自治があり、自由があったわけでございます。黄金の日々と言われるのはそのためでございます。また、当時のフ
ランシスコ・ザビエルなどの記録を見ますと、堺市と思われるまちの人は非常に道徳心が高く、子どもでさえ礼儀をわきまえているとされています。中世の堺市
は巨大な経済力を持ちながら、礼節をわきまえた日本の中で、ひときわ輝く自由なまち、自治のまちであったと思います。
中世において堺は確かに市長がよく口にされるオンリーワンのまちでありました。堺市で茶の湯が花開いたのは、商人の莫大な経済力がバックにあったからであり、経済的な独立が自由と文化をはぐくんだのでございます。
さて、現在の堺市は、税収が減り、財政的に厳しい状況が続いております。中世の堺市とは雲泥の差でございます。経済的に国に依存している割合が高い堺市
が、権限と財源が大幅に移譲される政令指定都市となります。自由どころか巨大な権限に振り回されることにならないか、心配しております。市長のご答弁で
は、行政と市民が協働して自由な創意のまちづくりをめざしておられますが、それは高く評価いたしますとしても、現在のような景気の伸び悩みと市の財政状況
で市民に自由を感じることができるのか、疑問のあるところでございます。
一方、教育の質は400年前と比べて決して高いとは言えず、道徳的にも後退していると思います。今の堺市を外国人が見て、子どもから大人まで道徳心が高
く、礼儀をわきまえているとは言わないでしょう。私たちが堺市の伝統を踏まえた自由都市・自治都市をめざすのであれば、まずは国家から経済的に独立するぐ
らいの気概を持って市政運営にあたらなければならないし、教育の水準も日本の中で最高の水準を満たさなければなりません。そうすることで、やっと中世の堺
の人々から伝統を受け継いだものとして、同じ目線に立つことができるのだと思います。
市長お示しの新しい自由都市・堺ルネサンス計画は、あくまで骨子案ですので、批判するわけではございませんが、現堺市民が中世の堺人の気概を感じるとこ
ろまで検討を十分に重ね、政令指定都市昇格を前にして、いま一度の政策の点検、さらに他の自治体が驚くような斬新な政策を考え出し、まずは経済的な独立
を、このぐらいの気概をめざし、教育を高め、市民が美徳ある自由を身につけることに全力を傾けるべきだと思うのであります。
さて、与謝野晶子についてですが、代表作とされる「君死にたまふことなかれ」は、本当に与謝野晶子の代表作と呼べるのか、この詩を代表作とする人の中に
は、与謝野晶子を反戦歌人、また反天皇、もしくは天皇批判の歌人としております。中学校の歴史教科書にも反戦の人として紹介されています。「君死にたまふ
ことなかれ」が反戦の詩でないことは、先ほど市長公室長よりご答弁があった中の与謝野晶子自身の言葉で十分理解できます。それでは、与謝野晶子は反戦詩人
なのでしょうか。例えば晶子の四男が1942年、海軍大尉として帝国海軍の駆逐艦に乗って太平洋に出撃するとき、「水軍の大尉となりて我が四郎み軍にゆく
たけく戦へ」と詠んでいます。また、国民覚醒の歌など、兵士から一般国民まで、それぞれの義務を命を捨てることに集約している詩もございます。戦争に関し
て軍事の武勇をたたえる歌はその他幾つもございます。だからといって、与謝野晶子が戦争好きなわけではございません。第一次世界大戦に日本が参戦するとき
に歌った詩では、今は戦うときだ、戦嫌いの私さえ、きょうこのときは気が上がるとして、自分を戦嫌いとしています。戦は嫌いだが、戦うときは戦えという
肝っ玉母さん的なところがあるのでしょう。「君死にたまふことなかれ」以外に日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じて反戦と受け取れるような詩
や歌は、私の知る限りございません。与謝野晶子を反戦の歌人に仕立て上げることが、いかに荒唐無稽なこじつけであるのか、おわかりになると思います。与謝
野晶子は反戦とは全く無縁の人でございました。
さて、「君死にたまふことなかれ」の中で最も物議をかもしたのは次のフレーズであり、天皇制に反対もしくは批判的だったとされています。それは、「すめ
らみことは戦いにおおみずからは出でまさね」のところですが、当時からこのフレーズは与謝野晶子が「君死にたまふことなかれ」を発表する直前に平民新聞に
載ったトルストイの日露戦争論「汝ら悔い改めよ」の日本語訳の中の、「汝、心なき露国皇帝、その他何と呼ばるる人にもあれ、汝等自ら彼砲弾銃弾の下に立て
よ 我等は最早行くを欲せず」と書いた箇所を晶子風に書き変えたと言われています。そのほかにも、「君死にたまふことなかれ」の中には幾つかもこのトルス
トイの日露戦争論「汝ら悔い改めよ」の日本語訳の盗作とは言いたくはありませんが、アイデアや言葉を借用した箇所が見られます。このことは昔から研究者の
間で論じられてきたことでございますが、なぜか重要視されてきませんでした。
実際の与謝野晶子は、生涯皇室を敬愛しておりました。皇室に対する感謝の念を示した歌やエッセイは幾つもありますが、1つだけ紹介いたしますと、「日本
国民たることの幸ひ」と題したエッセイの中で、「私の常に感謝している事が幾つかある。中にも第一に忝なく思う事は、日本に生まれて皇室の統制の下に生活
していることの幸福である」。また、与謝野晶子は明治天皇が公布されました教育勅語を日本人が遵守すべき倫理であると言っております。このような与謝野晶
子が反天皇、もしくは天皇制批判の歌人でないことは明らかでございます。
さて、「君死にたまふことなかれ」が実はトルストイの平民新聞に載った文章のアイデアや言葉が借用されているということであれば、それが果たして与謝野
晶子の代表作と呼ぶにふさわしいものか、また、与謝野晶子の実像とは違う反戦歌人や天皇批判と誤解を受けるような詩が代表作と言えるのか、「君死にたまふ
ことなかれ」は、当時の与謝野晶子の肉親の情を包み隠さず詩にしたものとしても、誤解され、悪用されることから、晶子にとってじくじたるものがあるのでは
ないでしょうか。与謝野晶子には、代表作と呼べる作品が数多くあります。「君死にたまふことなかれ」をもって与謝野晶子を反戦歌人、天皇批判の歌人と評価
するのは悪意に満ちた欺瞞により与謝野晶子をおとしめる者のしわざにほかありません。堺市は与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の本当の意味をよく研
究し、理解していく必要があると思います。
さて、与謝野晶子は与謝野鉄幹という1人の男性を生涯、尊敬と献身の念を持って愛し抜き、純潔を貫き通しました。晶子は女性にとって、貞操は道徳以上の
尊貴であり、この尊貴という字は、「尊」に貴族の「貴」と書きますが、純粋な純潔の肉体は自分の純潔な心の最も大切な象徴としてかたく保持したいと言って
おります。このことは、今の中学生、高校生にぜひ教えたい。援助交際など性の乱れはいまもって衰退の兆しはありません。少女買春をする大人も悪いが、モラ
ルを持たない少女たちにも問題があります。与謝野晶子を通じて1人の男性を生涯尊敬と献身の念を持って愛し抜き、純潔を貫き通すことがいかに女性にとって
大事なことか、また自分を大切にすることにつながるのか、少女たちにも十分理解できると思います。
また、晶子は子どもを産むことにこの上ない女の喜びを感じ、子どもを愛し、実に13人を宿しました。1人は流産し、1人は夭折いたしましたが、11人の
子どもを立派に育て上げました。いかに夫を愛し、子どもを愛したかの証明であります。このことは子どもを産むか産まないかに悩んでいる女性に伝えたい。日
本全国でご承知のとおり、少子化が問題になっています。少子化の原因ははっきりしており、2つしかありません。1つは結婚しないこと、もう一つは子どもを
産まないか、産んでも1人であると、これ以外にはありません。
100年前の子育て環境より今の方が劣悪だと言う人はいないでしょう。要は夫婦が愛し合い、子どもを産み育てることがどれほどすばらしいことか、これを
啓発していくことにあります。お金をかけて少子化対策をあれこれやるよりは、与謝野晶子の女性としての生き方を教えることが何よりも少子化対策となると私
は思います。
さて、最後に与謝野晶子は女性解放の旗手のようにされる場合があります。しかし、与謝野晶子が言っているのは女性の自立であって、女性の解放ではありま
せん。女性の自立と女性の解放では全く意味が違います。与謝野晶子が言う女性の自立は、主に女性の経済的な自立を言っており、男性からの解放を意味するも
のではなく、男性を助け、共存するための自立を言っています。女性の解放など、男性を敵視したような論調など、生涯1人の男性を愛し続けた与謝野晶子に一
つとあるわけがないと思います。
これまで挙げてきましたように、与謝野晶子のイメージは、皇室を敬い、日本に生まれたことを喜び、教育勅語を愛し、戦争は嫌いだが、いざというときは戦
うという精神を持ち、生涯、1人の男性を愛し続け、子どもをこよなく愛し、そして何よりも歴史上の希有の大歌人であった。これが私の抱く与謝野晶子像でご
ざいます。
与謝野晶子の実像は、さまざまな人たちよりゆがめられてきました。反戦歌人、天皇批判、社会主義者、女性の解放者などは、おおよそ与謝野晶子とは関係の
ない悪意を持った欺瞞に満ちたイメージです。ゆがめられた与謝野晶子像を払拭することは、堺市に住む我々の義務であり、堺市みずから、本来の晶子像を広め
ていく努力をしていかなければなりません。次の新札の発行はいつになるかわかりません。しかし、日本の歴史上の人物で新札の肖像になり得るのは、そう何人
もいるわけではありません。一たん候補に挙がったのでありますから、次の新札発行時には与謝野晶子を新札の肖像にするよう、今から具体的に全国に発信して
もらいたい。また、そのための予算措置もしていただきたいと思います。与謝野晶子は真に偉大な女性であり、大歌人です。新札の肖像に与謝野晶子がなれば、
どれだけ堺人として誇らしいことか、このことを強く要望いたしまして、この質問は終わります。
次に、人口の増加と税源の涵養ですが、これは学校選択制と教師の人材の確保と質の向上と密接な関係があると考えますので、あわせてご指摘及びご要望をいたします。
ご答弁では、当局も若年世代の人口定着と市外からの誘引を図る施策が不可欠とのことでした。具体的な目標値については策定作業中ということで明らかにさ
れませんでしたが、具体的な目標なくして実行はできません。早急に検討していただきたい。その際には、先ほど申し上げたとおり、30代、40代の若い世代
の人口の増加、具体的な目標を上げ、30億から40億の税収増を真剣に考えるべきであります。当局として具体的な施策として、教育を重視している点は評価
いたしますが、どうしても堺市に引っ越ししてまで受けたい教育が実施できるのか、そのことがこれからの大きな課題でございます。
さて、具体の教育政策は教育委員会に移りますが、教育委員会のご答弁では、教育を受ける側の観点から、学校選択制について研究していくとのことでござい
ますが、私はすぐにでも実行にあたっての検討段階に入っていただきたいと思うのであります。学校教育は画一化から多様性の時代に入っております。また、学
校選択制は次にご質問いたしました教師の人材確保及び質の向上にも大きな効果があると信じるからであります。私は、30代、40代の世代を堺に呼び込む最
も効果的な施策は、校区の自由化、すなわち学校選択制にあると思います。30代、40代の世代は各市とも定着を図りたいし、誘引したい。どこの自治体でも
考えることは同じです。より早く、よりよい施策を実施した市が大きな効果を得ることができます。その意味で、堺市は来年に政令指定都市になるわけですか
ら、大きなアドバンテージを得ることになるわけです。30代、40代で子どもを持つ家庭において最も大きな関心事は教育でございます。この世代はよりよい
教育環境を求めて住居を移動する確率の高い世代だと言えます。
さて、学校長の権限を拡大し、特色のある学校づくりを進める一方、校区を自由化すれば、どのような効果が出るでしょうか。子どもや保護者にとって、自分
のニーズに合った、行きたい学校を選べるという大きなメリットがあります。学校を選べるようになれば、当然人気のある学校、人気のない学校が出てきます。
その地域におきましても、学校と地域の自治会は密接な関係にあり、小・中学校に愛着があります。その学校がもし人気がなければ、地域から大変なプレッ
シャーがかかります。そのため、教師、学校長を初め、よりよい学校にするために努力していくでしょう。今の学校は教師の努力する、しないに関係なく、教育
を受ける側の子どもたちは、その校区に生まれれば、校区指定の小・中学校に行かざるを得ません。教師の質は昔に比べて落ちていると言われております。教師
は、昔は聖職と言われていましたが、今は労働者意識が強いということでございます。それならば、努力をして、よい教育をする教師には高い給料を与えればよ
い。教師は、教育というサービスをすることにより給料を上げるのですから、サービスを受ける子どもや保護者の側の満足の高い教師に高い給料を与えることは
当たり前のことであります。このことが定着すれば、今後、採用において、堺市はやる気のある熱心な教師には高い給料がもらえることになり、多くの有用な人
材が堺市の教師をめざすようになるのではないでしょうか。
現状では、政令市になり、大阪府の採用と堺市の採用が、どちらが魅力的かと問われたら、これから教職につこうとする人の多くが、大阪府の方が魅力的と感
じるでしょう。今までは校区が固定されていたことから、子どもたちには選ぶ権利はありませんでした。しかし、学校選択制になれば、選ぶのは子どもたちであ
り、選ばれるのは学校であり教師です。当然、学校間でよりよい学校づくりに励むようになり、教師の質も向上することになるはずです。教師の質の向上に一部
評価制を導入して役立てているとしておりますが、評価制は同僚が同僚を評価するものであって、形骸化しやすく、事実形骸化している自治体が多くあると聞い
ています。校区の縛りにより、等しい教育を受ける権利が阻害されているという今、校区を自由化し、学校選択制に移行することは、教育を受ける側にとって最
も望んでいることと思います。
自由という概念を本日の大綱質疑の最初に市長にご質問したのはこのためでもあります。市長は、自由都市の意味のところで、自己決定と自己責任という言葉
をお使いになりました。校区の自由化は、子どもたちや保護者の自己決定と自己責任の中で行われるものであり、大いに活性化することになると思います。
さて、校区が自由化し、各学校で特色ある学校づくりが進められれば、堺市の周りの地域ではしていないことですので、堺市周辺にお住まいの方も関心が高く
なります。校区制堅持による学校間の教育環境の格差は、堺市以外の自治体でも問題になっています。その中で教育環境の格差の是正のため、堺市が校区の自由
化に着手、子どもたちが学校を選べるとしたら、30代、40代の我が子の教育に関心のある若年層の呼び込みに大きな成果があると思います。この結果、人口
が増加し、税収がふえる、このように私は思うわけでございます。どれだけの人口がふえ、どれだけの税収がふえるかは、どれだけ大胆に自由化できるかという
ことにあると思います。このような教育は先進性があり、個性を尊重する堺市の歴史と伝統を考えた場合、最もふさわしいことではないでしょうか。できるだけ
大胆に斬新に実施されるよう検討していただきたい、このように思います。
確かにご答弁でもございましたように、昨今、登下校時の子どもの安全が問題視される中、子どもの安全を万全にする必要から十分に検討することは必要でご
ざいます。しかし、登下校時、時間をかけてまでも行きたい学校があれば、その者の意思を尊重し、選択制を導入する必要性も検討していかなければならない時
代に来ていると思います。教師の独自採用は、二、三年で実施されることでしょうから、それまでに学校選択制をできれば実施していただき、堺学校インターン
シップ制度も高く評価しておりますが、学校選択制の実施は、堺市の教育の質を画期的に向上させ、先生の質も向上させ、若年層の人口をふやし、長期的に税収
をふやす、このように思います。教育委員会だけでなく、全庁一丸となって進めていただきたい、このことを強くご要望いたしまして、この質問は終わります。
さて、最後に人権についてですが、市民人権局長より人権の定義をお答えいただきました。さて、ご答弁では、人権とは、人は生まれながらに自由であり、人
間としてたっとばれ、幸せに生活する権利ということですが、これは世界人権宣言に書かれている趣旨に合致しております。しかし、本当に人には生まれなが
ら、そんな権利が保障されているのだろうか、疑問に思ったことはないでしょうか。例えば独裁政権の国や内戦状態にある国に生まれた子どもたちには、いわゆ
る人権などはありませんし、そんな国に生まれた人など、自分に、生まれながら自由であり、人間としてたっとばれ、幸せに生活する権利があろうなど夢にも
思っていないと思います。
生まれながらにして自由がなく、尊厳がなく、幸せな生活もない人など、この世界に何億人もいます。私は、北朝鮮による拉致事件が明るみになったとき、そ
う確信いたしました。横田めぐみさんや、有本恵子さんなどの拉致された人々は、幾ら北朝鮮で大きな声で人権だと叫んでも、人権など全く保障されません。北
朝鮮政府により、日本国民としての権利のすべてを剥奪されているからであります。人権というものがあるとすれば、民主的な国家が建設され、国家主権が確立
されている国の国民のみに与えられるものです。人権というよりは、国民の権利と言った方がいいかもしれません。国民の権利、すなわち自由とか安全というも
のは、その国の先祖から不断の努力によって形成されてきたものにほかならないと考えております。あえて人権の定義をお答えいただいたのは、そのことを申し
上げたかったからでございます。
人権条例についてですが、ご答弁のとおり、人権というものを尊重するという基本姿勢に基づくものであるならば、一定理解いたします。しかし、現在、国で
も議論されているような人権擁護法案的なものであるならば、絶対に反対をいたします。なぜならば、人権擁護法案的な人権条例は、国民の自由を大幅に制限す
るものであります。このことは強く申し上げます。
次に、平和と人権資料館ですが、この資料館は第1回目の質問でも申し上げたとおり、以前は偏った内容の展示が問題となった資料館でございました。リ
ニューアルオープンされる平和と人権資料館は、ご答弁によれば、平和、人権、環境の3つのゾーンに分け、堺らしさをアピールする展示の工夫をするというこ
とでございますので、今後注目していきたいと思います。
さて、最後に北朝鮮による拉致事件でございますが、この事件の本質は国家主権が侵されれば、国民の権利はすべて奪われるということでございます。この事
件は解決したわけではとありません。今でも恐らく100名を超える拉致された日本人が生きて同胞の救出を待っております。一たん、国家主権が侵されて、国
家主権の及ばないところに国民が連れ去られた場合、現在の日本では、話し合い以外になすすべを知りません。我々は今でも同胞の日本人が100名以上北朝鮮
に拉致され監禁されている事実を知っていながら、20数年間も何もできずに見殺しにしております。この状態に対し、痛切な反省をし、国民の力を結集して、
邦人全員の奪還救出をもってこたえるしかない。それをしなければ後世子孫に顔向けができない、このように思うのでございます。
拉致問題を風化させることなく、現在の我々の痛切な反省の意をあらわし、国家の主権と人権をよく考え、今後、このような事件を決して起こさないようにす
るためにも、平和と人権資料館には北朝鮮による拉致事件を大きく展示していただきたい、このように思います。
国家の主権が及ぶところで人権が侵害されている人がいる場合、我々は手を差し伸べて救うことができます。しかし、国家主権の及ばないところで人権を侵害
されている国民をどのようにして救うのか、国民主権と人権についてよく研究した上で、人権条例の制定も平和と人権資料館の展示も検討していただきたいと思
います。このことを強くご要望いたします。
以上をもちまして私の大綱質疑を終了いたします。ありがとうございました。
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