◆水ノ上 委員 皆さん、おはようございます。プロジェクト堺の水ノ上でございます。本日は1点ご質問いたしますが、先月、私は東京の方に教育の方の視
察に行ってまいりました。東京都の教育長と千代田区の教育委員会、そして杉並区の教育委員会に参りました。目的は3点ございまして、1点は、きょうの質問
にあります中・高一貫校の状況・経緯について、それとですね、杉並区では、今まで私はこの場で再三お話ししてきましたが、昨年の教科書採択におきまして、
扶桑社の新しい歴史教科書が採択されました。その経緯についていろいろお聞きしたいということで行きました。そして3点目が、堺市もこの4月から政令市に
なります。それで、教員の採用が堺市独自で今後されるわけですが、杉並区というのは、その教師採用のための師範塾、師範館というのをしておりまして、区自
体で優秀な教師を育てよう、こういうことをやっております。
そういうことで行ってきたんですが、堺市も教師の育成に関しては、インターンシップを用いて積極的にされてます。こういうことから、パンフレット2枚お
持ちしましたので、1部お預けいたしますので、こういうことも検討していただきまして、また優秀な教師の人材の獲得に励んでいただきたい。ここにですね、
師範館、杉並師範館の設立目的はこのように書いております。
気高い精神と卓越した指導力を持った教師を養成することにより、杉並区の新しい学校づくりに寄与し、もって日本の教育再興の礎となることを目的とする。こういうふうな崇高な目的でされている。
今回の東京の視察で感じましたのは、日本の教育を再興するんだ、東京都が再興するんだという意思がみなぎっているような気がいたしました。さすがに東京
だなという気がいたしましたんですけれども、もう1点は、先ほど申し上げた杉並区の教科書採択でございました。ここにその教科書採択に至る議事録を手にし
ているんですが、これはホームページでも掲載されてるらしい。これを読みますと、歴史学者顔負けのけんけんがくがくな議論が2日にわたってされているわけ
です。それで最終的には扶桑社の教科書になったわけですけれども、これを見て、真剣にやられてたと、我々の教育委員会の方もそれは認めますけれども、また
4年後に採択がございます。そういうときのために、一度こういうところの議事録などもご参考いただければ、このように思うわけであります。
そうしましたら、本日の本題でございます中・高一貫校についてお尋ねいたします。
東京は平成9年に教育改革をスタートいたしました。それはなぜかといいますと、少子化と、これはどこでもそうですが、また途中退学の増加、それと昨今い
ろいろ問題にされつつある所得格差から、親の所得が子どもの教育能力を左右するのは好ましくない、こういう立場から、何とか公立の中・高で学力を上げなけ
ればならない。こういう使命といいますか、そういうことから教育改革が行われてきました。東京では、そのために中・高一貫校、中等教育学校改革ということ
で今着実に進めているわけでございますが、私の知っている限りでは、以前、文科省は予定では当面全国で500校の中・高一貫校をつくるというふうにしてお
りました。これは全国の高校の学区に1つずつの中・高一貫校をつくるという目的だったらしいんですけれども、そういうところから、各、日本全国の先進的な
地域では中・高一貫校をするという動きが出てきました。東京もそのとおりでございまして、昨年に都立1校開設して、ことしは東京都立で3校、区立で1校、
中等教育学校としてスタートする予定です。こういう都立高校とか区立高校などは、実はこれ、伝統校とか非常に学力の高い学校を標準にして中・高一貫校にし
てるわけですね。というのは、ここでエリートをつくりたい、本当に能力の高い生徒をつくりたいという意欲のあらわれだと思いますけれども、そういう意思か
ら、こういう中・高一貫校をしているわけでございます。
新聞でもご存じだと思いますけれども、入試は大変難関でございまして、5倍から10倍の難関、入試といっても、普通の受験の勉強ではなくて、適性検査と
いうんですけれども、それで選択をするわけですが、非常に難関だと言われています。東京都では平成22年までに10校の、今の5校プラス5校、計10校の
中・高一貫校を開設するために着々と準備を進めているわけでございます。
さて、堺市でございますが、高校教育改革を検討し、中等教育学校の設置に前向きでございました。しかし、ご存じのとおり、平成16年に基本方針が凍結を
されました。東京都庁に行ったとき、都教育庁の学務部都立高校改革推進担当副参事と1時間ほど中等教育改革について話をしたんですが、開口一番、堺市さん
はなぜ中・高一貫校をあきらめたんですか。財政上の理由から計画を凍結したとお聞きしていますが、本当ですかと、このように開口一番聞かれました。私は、
そのとおりですから、そのとおりですと言うしかありませんでしたけれども、そしたら、向こうの副参事が、ああ、やっぱり本当だったんですねと、こういうふ
うにちょっとがっかりしたような感じを受けました。
そこで、今後の中・高一貫校の方針といいますか、高校改革も含めてですが、そういうことについてご質問をしていきたいと思います。高校教育改革につきまして、中・高一貫校も含めてですが、現在までの経緯と凍結に至った背景について改めてご答弁ください。
◎三浦 教育改革推進担当課長 中・高一貫教育校に関する経過と凍結についてのご質問でございますが、本市におきましては、高校教育改革にかかわる取り
組みの中で、中・高一貫教育についての経緯といたしましては、平成10年7月、堺市教育改革審議会に、個性を生かした高校教育について諮問をいたしまし
て、平成12年8月、同審議会から提示されました答申におきまして、堺市立商業は中・高一貫教育と総合学科の導入のもとに新しい学校として再構築する必要
があるという形で示されております。この審議会の答申を受けまして、教育委員会におきましては、高校教育検討会における検討を経まして、平成14年8月、
中等教育学校の設置を盛り込みました堺市高校教育改革基本方針を策定いたしたところでございます。
それ以降、教育委員会におきましては、本基本方針に基づき、さまざまな取り組みを進めてまいりましたが、当時、平成15年の夏ごろ、教育分野におきまし
ても、国の規制緩和等の動きも活発になるなど社会状況が大きく変化するとともに、本市での平成16年度の予算編成にあたり、全体といたしまして、財政状況
が一層厳しい状況となりました。そして、委員ご指摘のとおり、平成16年2月、教育委員会におきましては、国及び地方における教育行政の動向並びに不透明
な財政状況の中、本市の高校教育改革につきましては考慮しながら推進しなければならないと考えておりまして、これまで中等教育学校及び単位制定時制高校に
つきましては、基本方針に沿って取り組んでまいりましたが、本市の大変厳しい財政状況や行財政改革の取り組みの観点から検証するため、基本方針を凍結する
ことといたしました。以上でございます。
◆水ノ上 委員 さて、今のご答弁いただいた最後の方に、この中等教育、中・高一貫校を凍結した原因が大変厳しい財政状況や行財政改革の取り組みの観点
からということでございました。財政的に厳しいのは堺だけではなくて全国的にほとんどの自治体が厳しい状況です。私は以前から、財政的な理由をもとに教育
改革を足踏みしてはだめだと、こういう立場ですから、そういうことで以前から幕末の上杉鷹山、山田方谷、また米100俵の小林虎三郎などの例を挙げて、苦
しいときこそ教育改革に邁進しなければならない、こういう立場で立ってきたわけでございます。ただ、この今の市長の行財政改革というのも、それはそうとし
て認めますけれども、教育改革が行財政改革の一環としてとられているような気がして、私はそれが残念でしようがない。行財政改革の一環ではなくて、教育改
革は教育だけで力強く邁進すべきだ、このような認識を持っているわけでございます。
そこで、大変どこの自治体も財政状況は厳しい中、教育改革に取り組んでいるわけですが、他の自治体につきまして、この中・高一貫校についてどのような取り組みをされているか、簡潔で結構ですので、お答えください。
◎三浦 教育改革推進担当課長 各自治体の取り組み状況でございますが、中・高一貫教育は、平成11年4月から制度化されております。現在、平成17年
4月の現在でございますが、全国国立・公立・市立の学校を合わせまして173校が設置されております。このうち、公立の中・高一貫教育校につきましては
120校でございまして、その内訳といたしましては、1つの学校として6年間一体的に中・高一貫教育を行う、いわゆる中等教育学校が8校、同一の設置者に
よる中学校と高等学校を接続して中・高一貫教育を行います併設型と呼ばれるものが38校、そして設置者が異なる中・高を結んで連携を深める形で中・高一貫
教育を行います連携型と呼ばれるものが74校でございます。
近畿圏を見てみますと、中等教育学校については兵庫県、併設型につきましては京都府、滋賀県、滋賀県は3校ございますが、和歌山県、京都市、連携型につ
きましては奈良県、和歌山県、和歌山県は3校でございますが、そういった設置になっております。また、大阪府におきましては、平成16年4月から大阪府北
の能勢地域において連携型が本格実施されております。さらに大阪市は平成20年4月を目途に併設型の中・高一貫教育を実施すると、そういった予定であると
公表されております。以上でございます。
◆水ノ上 委員 さて、今のご答弁をいただいて、本当の意味での中・高一貫というのは、中等教育学校だと思うんですけれども、それは全国の公立で八つし
か今はないということで、大阪府にはもちろんございません。大阪府には、先ほどご答弁がございましたように、能勢に連携型と、また大阪市では20年に併設
型ということでございます。私は、政令市になるにあたりまして、堺市の教育改革、2つの目玉をしてほしかった。それは1つが中・高一貫校、その意味での中
等教育学校の設置と、それと以前に前回の議会で申し上げた校区を撤廃して校区の自由化といいますか、その2つを私は教育改革にぜひ必要だろうと、このよう
にも思っているわけでございますが、先ほど千代田区の話が出ましたけれども、千代田区教育委員会の中等教育学校開設担当部長、この方と1時間半ぐらいお話
ししたんです。この方は、石原都知事から、千代田区で区立の中等教育学校をつくれ、と言われて、都庁から千代田区の教育委員会に派遣された。ここでめざす
教育とは何かといいますと、まず、文武両道であるということ、あと中・高一貫校の目標は、大学に期待はしない。高校を卒業する時点で国際的、世界に通用す
るだけの人格・能力を備えつけた子どもをつくるんだ、このようにきっぱり申されてる。
千代田区は堺市と違いまして、全国有名な会社の本社がたくさんあります。ですから、法人税、法人市民税が潤沢にあって、財政上は、我々の堺市と比べるま
でもなく、非常に優遇されている。そういうことから、非常にお金をかけてやっているわけです。ですから、単純に堺市と比べるわけではございませんけれど
も、そういう熱気というのが確実に東京都、首都を中心に広がってるということでございます。また、こういう学校を支援する企業というのがたくさん出てきま
して、こういう学校をつくるとなったら、コンピューター会社が、うちのコンピューターの部屋、研修室を学校に提供してもいいよとか、ほかにもいろんな会社
から、その学校の教育のために自分とこの資源を提供してもいいというようなことがどんどん出てきてるらしい。うれいし悲鳴というふうにおっしゃってる。
そこで、都立ではできない。私立ではやらない。都立は一応平等教育をしなきゃなりませんから、1つだけ突出するわけにはいかないというからできない。私
立はお金がかかり過ぎるから、そういうのはできない。だから、この千代田区の学校は九段中等教育学校というんですが、この九段の中等学校でそれを実現する
という意気込みでやってるわけでございます。
さて、我々の堺市でございますが、高校教育改革を通じて、中・高一貫、一たんは凍結されましたけれども、今後、こういう日本の教育行政の流れを経て、も
う一度、この凍結を解除して考え直すべきだと、このように思うわけでございますが、現在の取り組み状況についてお答えください。
◎三浦 教育改革推進担当課長 現在の取り組みでございますが、教育委員会におきましては、平成16年2月、基本方針を凍結して以降、検討の途上におき
まして、高校教育改革の出発点に立ち返ると、そういった方向を示し、現在改めて高校教育改革全体を検討しているところでございます。また、さらなる検討の
一環といたしまして、本年、18年の1月から新たに堺市高校教育改革推進会議を設置いたしまして検討を進めているところでございます。そこにおきまして
は、市全体の中学校における教育内容あるいは教育活動を引き継ぐことができるような、いわば市立中学校との連携のあり方、また幼稚園、保育所等を含めまし
て市立小学校・中学校・高等学校での教育を見通しまして、一貫性のある教育体系の構築など、そういったところに資する高校教育のあり方について検討してい
るところでございます。以上でございます。
◆水ノ上 委員 平成18年、ことしの1月より高校教育改革推進会議を設置されて検討を進めているとのことで、また、その目途に一貫性のある教育体系の
構築ということを挙げられていることは私は評価をいたします。ただ、今まで現在聞こえてくる中では、やはり高校教育改革の域を出てないのかなという感もい
たします。それはそれで大事だとは思います。それをぜひ進めていただきたいと思いますが、そこで、高校教育改革につきまして、市立高校のあり方、またより
望ましい高校教育についてどのように検討されているか、高校教育改革が必要な理由についてお答えください。
◎三浦 教育改革推進担当課長 市立高校、現在、商業高校、工業高校、第二商業、第二工業、4校持っておりますけれども、各校におきましては、創立以来
今日に至るまで、有為な人材をたくさん輩出いたして、卒業生の皆様は各界で活躍されております。しかしながら、時代の様相は大変大きく変わったことから、
高校教育のあり方につきましては、その急激な社会の変化や生徒の進路状況の変化、また多様なニーズへの対応、さらに今後の社会が必要とする人材育成、そう
いった課題に対応するため、抜本的な改革が必要であると、そのように考えております。以上です。
◆水ノ上 委員 現在、市立商業・工業高校が4校ございます。この4校をただ単に行革の一環として、例えば4校を1校にする、4校を2校にしたら、経費
的に助かるからいいんだというような議論ではなくて、本当に必要な教育とは何かという観点からご検討いただきたい、このように思います。先ほど多様なニー
ズとおっしゃいました。多様なニーズとは、いろんな方々がいらっしゃって、生徒がいらっしゃって、そのニーズも大事ですけれども、今現在、日本で期待され
ている改革というのは、それを先んじたといいますかね、本当に能力のある、やる気のある人に高い教育を与える、こういう方向に進みつつある。そういうこと
も感じて、そういう方向からもぜひこの改革を進めていただきたい、このように思うわけでございます。
文科省がなぜその500の高校区に1校ずつ中・高一貫校をつくろうとしたか、それはその高校をつくることによって全体の学力を引き上げようというねらいがあるんだと私は推察いたしますが、そういうところもお考えいただいて進めていただきたいと思います。
さて、最後に今後の高校教育改革の進め方のスケジュールについてお答えください。
◎三浦 教育改革推進担当課長 今後の進め方、スケジュール等についてお尋ねですが、さきに答弁させていただきました推進会議におきましては、より望ま
しい高校教育を実施していくために、市立小・中学校における教育と高校教育とをどのように接続させていけばいいのかと、そういった連携方策や、今後ますま
す重要となります高・大連携を視野に入れまして、求められる人材育成につきまして、高校教育段階でどのような役割を担うべきか、そういった検討を進めてい
くこととしております。本推進会議は今後も継続いたしますが、さらなる研究・協議等を進めまして、最終的には報告書を作成する予定でございます。
教育委員会といたしましては、この報告や現在委託中の調査結果等を踏まえまして、またさらに市民の皆様のご意見や議会でのご議論をいただきながら、可能な限り早期に市立高等学校のあり方をお示ししてまいりたいと考えております。以上でございます。
◆水ノ上 委員 ご答弁ありがとうございました。きょうは東京都の視察を通じてですね、中・高一貫校について今後の方針を議論してきたわけですが、先ほ
どご紹介いただきました千代田区の中等教育学校開設担当部長はこう言われました。九段中等学校の受験には、本来ならば、開成や麻布に行くような学力を持っ
た子が第一志望としてこの九段中学校を受験してる。我々は東京都ではできない、また私立ではやれない日本一の中学校をつくるんだと、10年、20年続け
ば、必ずこの九段中学校は中学校の卒業生が日本をリードすると、この学校から日本を立て直す、そのために我々は寝食を忘れて頑張ってるんだと、このように
力強くお話しされた。これは皆さんと同じ行政マン、教育に携わる行政マンの言葉でございます。そういうことを聞きまして、今の大阪はやっぱり東京に勝てな
いなと、このように思いました。地方の時代、地方分権と言われますが、永遠に地方、こういう教育行政の意志がここまで高ければ、永遠に地方の時代は来な
い、このように思うわけでございます。地方から教育改革をしなければ、決して地方に花が咲くことはない。ですから、そういうことも含めて皆様方には寝食を
忘れて頑張っていただきたい、このように思うわけでございます。
私は、本市でも中等教育学校が平成18年に開校し、政令指定都市の実現とあわせて、大阪で率先して教育改革に乗り出したと、全国的に大台に上った、そう
なれば話題に上ったのにと、非常に残念に思っておりました。しかし、決して今からでも遅くはない。市として財政状態が厳しいのはよく承知しておりますけれ
ども、私は日本全国の教育改革の流れにおくれることなく、質の高い教育の実現のためには必要な予算を投入することが重要であると考えております。そして、
今までのような横並びの教育ではなく、能力とやる気を兼ね備えた生徒をさらに伸ばすような教育、このような教育内容を提供する学校がこれから必要になって
くるんだと、このように思うわけでございます。
先ほど申しました、九段中学校をつくることによって日本の教育を変える、日本のリーダーをつくるという気概で皆さんもぜひ取り組んでいただきたい。現在
推進会議を設置して、高校教育について検討しているとのことでございますが、高校教育改革のみでなく、中等教育学校の設置も視野に入れて、市全体の学校教
育力を引き上げるために、目標となる、より高度な学校も必要だということをよくお考えいただいて、ご検討をいただきたいと思います。
以上で本日の私の質問を終わります。ありがとうございました。
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