◆3番(水ノ上成彰君) (登壇)皆さん、お疲れさまでございます。プロジェクト堺の水ノ上です。プロジェクト堺を代表いたしまして大綱質疑を行います。
堺市は、木原市長のリーダーシップのもと、着々と行財政改革を進められ、財政を再建しつつある途上だと評価しております。私
はかつて議会におきまして、上杉鷹山の銘を用いて行財政改革の断行を進言申し上げたことがございます。上杉鷹山とは、改めて申し上げるまでもありません
が、再起不能と見られた米沢藩の財政を見事によみがえらせ、アメリカ合衆国大統領の故ジョン・F・ケネディが日本で最も尊敬する政治家として挙げた人物で
ありました。みずから質素倹約を行いつつ、3つの努力として、城、地域、個人に倹約を徹底させることにより、藩の財政を立て直しました。
さて、米沢藩といえば、現在の山形県にあたりますが、遠く山形県の例を出すまでもなく、我が堺市で上杉鷹山をさかのぼること、1400年前に、既にみずから倹約をし、民を潤すことに専念された偉人がいらっしゃいます。その方の歌をご披露いたします。
『高き屋にのぼりてみれば煙立つ民のかまどはにぎはひにけり』ご存じだと思いますが、この歌は和漢朗詠集や新古今和歌集にお
さめられている仁徳天皇の御製でございます。仁徳天皇は、高殿に上って国の中を冒険なさいましたが、炊事をする煙が見えないので、人民が疲弊しているもの
は察せられ、3年間、税を免除をされたのですが、そのために、天皇の着物や履物が破れてもそのままにし、食事も倹約し、垣根が壊れても修理をさせず、屋根
が傷んでも葺きかえをさせず、雨風がすき間から入って衣服をぬらし、屋根が破れたところからは星が見えるようになった。このような生活を続けながら、徹底
的な緊縮財政をしき、国が豊かになるように指導なさいました。3年がたって百姓が豊かになり、蓄えができて、どこもかしこも炊事の煙が立つさまを見て、詠
んだ歌だと言い伝えられております。その後も仁徳天皇は善政を続けられ、民から慕われ、その結果、あのような巨大な墳墓になったと言われています。
堺市は、百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録を進めていますが、仁徳天皇の陵を世界遺産に登録することは、仁徳天皇を徳
と、仁徳天皇を慕った人民の偉業が評価されることであり、まことに意義深いことと思います。我々政治家は、先人を見習い、民やすかれの精神を持って、身を
慎み、政治を行っていきたいと思うのであります。
百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録に関しては、後ほどご質問するとして、以下5項目にわたり大綱質疑を行います。理事者の皆様におかれましては、的確なご答弁をよろしくお願いいたします。
《1.中小企業振興策》
まず最初に、中小企業振興策についてお尋ねいたします。
我が国経済が一時の回復基調から減速に転じつつある中、大阪府も景気が減速しつつあると感じております。その中でも、堺市は
優良企業を中心に法人所得が増加傾向にあります。そのことにより、法人市民税は20年度予算において145億円余りと、19年度決算見込み額の135億
円、平成18年度決算額は127億円でしたので、年々法人市民税は増加をしています。法人市民税が増加をするということは、企業が利益を上げているという
ことです。また、堺市内における企業数も、3年前は約1万6,800社であったのに対し、現在では1万7,300社となり、この3年で約500社、企業が
ふえております。
企業数に占める赤字欠損会社も、3年前は9,500社、赤字会社の割合は56.8%でありましたが、現在は9,400社、54.3%と、まだまだ割合は高いとはいえ、減少しつつあります。
法人の好調に伴い、雇用も拡大しているように、堺市内の給与所得者は平成18年度27万2,000人から団塊の世代の退職が
あるにもかかわらず、現在は27万4,000人の給与所得者が見込まれております。堺市全体の給与所得者の給与総額は、ここ3年間、1兆2,800億円か
ら1兆3,000億円の水準を保っております。一般に貯蓄率が下がっていることから、消費が拡大していることが予想され、消費の拡大が景気を牽引している
と思われます。
そのような状況で臨海地区にシャープの液晶工場を初めとする21世紀型コンビナートが建設されているわけで、これからますます堺の税収は潤うことになるだろうと期待をしております。
さて、反面、中小企業に目を向ければ、同じ業種でも企業間格差が出てきており、シャープなどの大企業進出により、その格差は
さらに広がるのではないかと心配する企業も少なくありません。言うまでもなく、堺市は中小企業が堺市の産業を支えてきました。私は職業の関係上、多くの中
小企業の決算書を見ますが、表に出ている数字とは違い、まだまだ経営の苦しい中小企業が多いと感じます。今回、20年度予算では、中小企業振興策が何点か
あげられていますが、その中でも、特に臨海部の巨大な経済活動を内陸部中小企業の振興にどのようにつなげていくのか、この支援策についてお尋ねをいたしま
す。
《2.外郭団体の改革》
次に、外郭団体の改革についてお尋ねをいたします。
今回、大阪府知事に就任された橋下知事は、外郭団体についても、ゼロベースから見直すとの考え方を示しており、今後、統廃合
や職員の大幅な削減や補助金のカットなどが行われようとしております。一方、堺市においては、21の外郭団体があり、補助金の一部カットや職員の引き上げ
などは行われているとのことですが、大胆な見直しといえば、堺市中小企業振興会と南大阪地域地場産業振興センターとの統合、農業公園の廃止のみでありま
す。第三セクターの存在意義も、時代の流れの中で大きく変わっています。特に指定管理者制度の創設や市場化テストの導入を初め、市役所サービスの民間開放
が進んでおり、そうした中で、特に財団法人のあり方は、10年前とは大きく変わっています。新行財政改革計画においても、外郭団体については、市の関与の
あり方や統廃合についても踏み込んで書かれております。
そこでお尋ねいたしますが、外郭団体の見直しは、いつまでに、どのように取り組もうとされているのか、お答えください。
《3.教育問題として学力向上の施策》
次に、教育問題として学力向上の施策についてお伺いいたします。
昨年のPISAなどの学力調査テストで、日本の学力が国際的に低下している結果が出た中、学力向上も視野に入れて新学習指導
要領案が先月2月に公表されました。平成10年改正の現行の指導要領で学力低下を招いたとされるゆとり教育路線を軌道修正し、30年ぶりに授業時間数が増
加されました。堺市における小・中学校生徒の学力低下も著しく、昨年行われました全国一斉学力テストの結果、大阪府は全国47都道府県のうち、45番目で
したが、堺市の学力テストの結果は、その大阪府の平均をさらに下回るものであり、関係者に大きなショック与えました。
20年度予算は、このような堺市の小・中学校生徒の学力の低下がはっきり認識された上でのものであり、何より学力向上のための予算措置がなされているのではないかと思いますが、そこでまず、学力向上に係る20年度の取り組みについてお答えいください。
さて、学力向上のためには、さまざまな方策があると思いますが、その1つに、堺市独自に堺市全小学校・中学校を対象とした一
斉学力調査テストを毎年実施しているということは、私は最も有効な方策でないかと思います。まず現状をしっかり把握することが必要で、現状の学力の把握な
しには、有効な方策をとることができます。堺市において、平成4年まで堺市共通テストが中学校で行われていましたが、平成5年に廃止されて以来15年がた
ちます。生徒たちや学校間を競争させるということではなくて、学力の到達度の実態を把握し、情報を蓄積し、学力向上のための的確な教育施策をとるには、堺
市全小学校・中学校の一斉学力調査テストが必要だと思います。現在、堺市独自の学力調査は行われていると聞きますが、その範囲は希望する学校のみの学力調
査で、対象は10数校とお伺いしております。
そこでお伺いいたしますが、堺市独自の学力調査のねらいと今後の計画についてお答えください。
《4.学校教育について、武道を取り上げることの意義》
続きまして、教育関連でもう一つご質問いたします。
先ほど申し上げましたとおり、先月、新学習指導要領案が公表されました。その中で、平成24年4月から、中学校1・2年生に
おいて武道が必修とされました。現在、中学校では武道は選択制とされているため、実施していない中学校も多く、今回必修とされたことは非常に喜ばしいと感
じております。
そこでお伺いいたしますが、学校教育について、武道を取り上げることの意義についてお答えください。また現在、武道は選択となっておりますが、現在の堺市中学校における実施状況と武道場の整備状況、あわせて指導者の状況についてもお答えください。
《5.百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録》
最後に、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録についてご質問いたします。
冒頭、仁徳天皇の業績を引用いたしましたが、その仁徳天皇陵、宮内庁の正式な名称は、仁徳天皇百舌鳥耳原中陵ですが、この仁徳天皇陵を初めとする百舌鳥・古市古墳群について、なぜ、世界文化遺産登録をめざすのか、改めて目的についてお伺いしたいと思います。
次に、昨年の9月に堺市、大阪府、羽曳野市、藤井寺市と共同でこちらにある世界遺産暫定一覧表記載資産候補提案書が作成され
ましたが、皆様、お読みになったかどうかわかりませんが、この提案書はどのような観点から作成されたものなのか、あわせてお答えいただきたいと思います。
以上で第1回目の質問を終わります。
○議長(西村昭三君) これより答弁を求めます。
◎市長(木原敬介君) (登壇)プロジェクト堺代表水ノ上成彰議員のご質問のうち、中小企業の振興策につきましてお答えを申し上げます。
本市は関西有数の中小企業の集積地であり、素材から製品までのものづくり産業のまちとして発展してまいりました。本市には、高いシェアや
技術力を有したオンリーワンの中小企業が多数存在しており、企業の経営体質を強化し、技術力等のポテンシャルを最大限発揮できるように中小企業の活性化を
図ることが地域経済の発展につながるものと認識をいたしております。
しかしながら、中小企業を取り巻く経済環境は、サブプライムローン問題に端を発する米国の景気減速懸念、石油減量価格の高騰など一層厳し
さを増しております。こうした中で、本市では、堺市産業振興センターを中小企業の支援拠点として位置づけまして、産業連携による技術開発や資金繰り悪化に
対応いたしました金融支援等を講じてまいりますとともに、堺浜において中小企業クラスターの整備を進めているところでございます。
このたびのシャープ株式会社や関連企業による21世紀型コンビナートの立地など、臨海部の活発な企業投資は、本市経済にとって大きなイン
パクトでございまして、この効果を内陸部中小企業に波及させることが当面の最重要課題でございます。このため、まず臨海部企業と内陸部中小企業との取引の
拡大を図ることを目的といたしまして、本市と堺商工会議所、臨海部企業等による協議会を立ち上げ、地域が一体となって事業機会の創出に取り組んでまいりま
す。また、堺市産業振興センターでは、中小企業同士が新たな技術や製品の開発に取り組む産産連携や産学連携を進めますとともに、中小企業の人材育成のため
のものづくり大学を開催いたします。さらに、堺産業振興センターを中小企業の総合相談窓口の機能を果たすワンストップの支援拠点といたしますとともに、あ
わせて堺商工会議所の機能強化を支援してまいります。
なお、その他のご質問につきましては関係局長からご答弁を申し上げます。
◎総務局長(佃芳治君) 外郭団体の改革についてお答えいたします。
外郭団体は本市の行政サービスを補完し、重要な役割を果たしているところでございますが、指定管理者制度やNPOなど、公共サービスの担
い手の多様化など、外部環境が大きく変化している状況を踏まえまして、民間で実施可能なものは民間にゆだねることを基本に、その事業内容の妥当性について
改めて検証していく必要がございます。こうした状況のもとで、本年12月に公益法人制度改革が予定されてございます。平成25年をめどに、現行の外郭団体
について、そのまま公益法人とするか、一般法人とするか、または解散するかを決定する必要がある旨示されているところでもございます。従来から、外郭団体
の見直しに取り組んでまいりましたが、これを機に、外郭団体の事業の再編・再構築や統廃合をさらに進めます。また、外郭団体の管理部門の統合や共同化を推
進し、実質的な統合による効率化も進めてまいりたいと考えております。
なお、外郭団体の自主財源確保や事業の見直し等により、市の財政面の関与を引き続き縮小するとともに、新行財政改革計画の取り組み項目に
基づき、市からの派遣職員の削減に努めてまいります。このような取り組みを総合的に推進し、外郭団体の改革を進めてまいります。以上でございます。
◎教育次長(鳥井廣二君) 学力向上についてお答えいたします。
学力向上に向けては、現在、学校ごとに学力向上プランを作成し、検証改善サイクルを確立するとともに、調査結果を踏まえ、教科研修等の充
実を図り、教員の授業力向上に取り組んでいます。今後、義務教育9カ年間を見通して、中学校区を単位に学力向上推進事業を実施いたします。その中で、中学
校区、中学校10校と同校区内の小学校20校程度を学力向上重点校とし、学力向上推進リーダーや学力向上サポーターを配置して、小中一貫した教科指導や学
習規律、習慣の確立に向けた取り組みを推進してまいります。
次に、本市独自の学力調査は、子どもの学力状況を把握いたしまして、授業づくりに生かすことをねらいとして、平成17年度から希望する学
校の小学校1年生から中学校3年生を対象に実施しております。来年度の学力調査については、対象者を2倍にふやし、実施する予定ですが、9年間を見通した
学力形成をめざして、子どもたちの思考力、表現力を中心とした学力向上に生かし、また、各学校が授業改善に生かす観点から、今後の実施内容方法を検討して
おります。
続きまして、学校教育における武道の取り組みについてお答えいたします。
武道は、我が国固有の文化としての伝統的に継承されてきておりまして、みずからを律し、相手を尊重するなどの人間性を培い、礼儀作法を養
うことができるなど、教育的な効果が期待できます。平成24年度からは、新中学校学習指導要領案では、男女とも武道が必修となりますが、現在、武道は必修
ではなく、学校選択として履修することになっており、平成19年度、本市立中学校では43校中6校で武道を履修しております。なお、武道場を有する学校は
6校という状況でございます。
教育委員会では、武道の基礎・基本的な指導ができる、すべての保健体育科教員が、より専門的で高度な指導ができるよう、今後指導方法の研究や実技指導などの研修に取り組んでいきたいと考えております。以上でございます。
◎市長補佐官(池川哲彦君) 百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録についてお答えいたします。
まず、登録をめざす目的についてでございますが、世界三大墳墓に数えられます仁徳陵古墳を初めとする百舌鳥古墳群は、4世紀
後半から5世紀後半にかけてつくられました日本を代表する巨大古墳群でございます。当初、100基以上ございました古墳は、都市化の進展などによりまし
て、現在、50基以下に減少しております。この百舌鳥古墳群を我が国のみならず、人類全体の遺産として末永く保存・継承するとともに、歴史と文化を生かし
たまちづくりを推進することを目的として、百舌鳥古墳群の世界文化遺産登録に向けた取り組みを進めているところでございます。
次に、世界遺産登録に向け提案書を作成した観点でございますが、本市では、平成18年4月に考古学、古代史、都市政策等の専
門家で構成する堺市歴史文化都市有識者会議を設置し、登録に向けた諸課題の検討を進めてまいりました。同会議で示されました歴史的経緯から、百舌鳥古墳群
と古市古墳群は一体的な形で世界文化遺産登録をめざすべきとの意見に基づきまして、昨年9月に大阪府、羽曳野市、藤井寺市と共同で百舌鳥・古市古墳群の世
界遺産暫定一覧表記載資産候補提案書を文化庁に提出いたしました。
この提案書におきましては、世界文化遺産に登録する遺産本体を百舌鳥古墳群43基、古市古墳群44基、合計87基の古墳とし
ておりまして、両古墳郡が日本の国家形成過程を示すモニュメントであるのみならず、日本列島で大小さまざまな規模や形の古墳が築かれた古墳文化を代表する
遺産であり、人類共通の宝として世界文化遺産にふさわしい価値を有するといたしております。また、両古墳群の一体的な保存・継承に向けては、古墳ごとの調
査を進め、保存管理の方法について今後十分検討することといたしております。
なお、宮内庁が管理いたしております陵墓につきましては、緑の多い静粛な環境が維持され、尊厳と平安が保持されていることから、現在の宮内庁による陵墓の保存管理を尊重するということにいたしております。以上でございます。
◆3番(水ノ上成彰君) 議長。
○議長(西村昭三君) 3番水ノ上成彰議員。
◆3番(水ノ上成彰君)
ご答弁ありがとうございました。まず、中小企業振興策ですが、市長よりご答弁をいただきました。今後、法人市民税は増加が見込まれるものの、政令指定都
市の中では、法人市民税総額及び人口1人当たりの法人市民税ともに、17の政令指定都市の中で、堺市は最下位でございます。まだまだ産業、特に中小企業が
弱いことが気になるところであります。シャープや、その関連会社の進出はもちろん歓迎するところでありますが、先ほども申し上げたとおり、中小企業の中で
企業間格差が広がることが懸念されております。堺市には、高い技術力を持つ企業が少なくなく、事実上、経営上の連携を強く求めています。
このような状況の中、堺商工会議所と金融機関等による協議会の結成や、中小企業同士の連携の強化など、今回の中小企業への積極的な取り組
みは評価しているところでございます。このような施策を通じて、政令指定都市にふさわしい大企業と中小企業の調和のとれた、足腰の強い産業構造の確立に取
り組んでいただきたいと思います。
以上、要望申し上げてこの質問は終わります。
次に、外郭団体の改革についてですが、外郭団体については、これまで何度か議会で取り上げてまいりましたが、平成18年6月に公益法人制
度改革に伴い、関連3法が公布されたことにより、外郭団体を取り巻く環境が今後大きく変化していくことが予想されるため、あえて総括的な質問をさせていた
だきました。多くの外郭団体は、今後、公益法人認定法の施行とも相まって、統廃合を余儀なくされていきますが、平成25年という新制度による公益法人への
移行期限が切られているため、21の広域法人の内容をよく見きわめた上、事業の再編・再構築、統廃合が必要と考えます。
外郭団体は、たびたび包括外部監査の監査対象とされており、現在、平成19年度の包括外部監査においても、外郭団体が監査対象とされ、公
益法人制度改革関連3法施行に伴い、それぞれの外郭団体のあり方も含めて検討されていると聞いております。よって、本日の質問はこの程度にとどめ、包括外
部監査報告書を受け取って後、さらに議論を深めてまいりたいと思います。
以上でこの質問を終わります。
次に、学力向上の施策についてご答弁をいただきました。学力向上推進事業として1億400万円余りの予算計上されております。堺市の小・
中学校生徒の学力低下に歯どめをかけ、学力を向上させるために割り当てられた予算であり、一応の評価をいたしますが、その対象は堺市43中学校区あるうち
の10校区であり、小・中学校ともに堺市内の小・中学校の4分の1が対象であるにすぎません。次年度、10校区を対象にし、それ以降どのように展開してい
くのかわかりませんが、私は全校生徒を対象とした学力の底上げを図るような事業を展開していく必要があると思います。
そこで、私が先ほど提案申し上げた堺市の小・中学校全校を対象とした一斉学力調査テストの実施を行っていただきたいということでございま
す。先ほど申し上げたとおり、生徒たちを競争させるということではなくて、学力の到達度の実態を把握し、情報を蓄積することがまず必要であると思います。
学校により、学力にばらつきがあるのが現実であり、教育の平等という観点からも情報の蓄積は不可欠であります。例えば小・中学校9年間を通じて、学力向上
を考えるというのであれば、小・中学校の連携を考えて、小学校4年生から6年生まで、中学生は1年から2年にテストを受けさせた場合、先日、教育委員会に
試算していただきましたが、約3,000万円のコストがかかるということでございます。3,000万円のコストが高いと見るか、安いと見るかでございます
が、私は将来、堺市の子どもたちの学力を向上させるためには、毎年3,000万の支出は決して高くはないと思います。
ご答弁では、現在、学力調査は希望する学校のみで、来年度については、本年度の2倍にふやして実施するということで、一歩前進とは思いま
すが、2倍にふやしたとしても、堺の小・中学校の約半分にすぎないことから、全校において実施することにこれから大きな意味があると思いますし、希望する
かしないかは生徒が決めるのではなく、教師に左右されることが多く、学校間の均衡が保てなくなる可能性がございます。このようなことも考えて、よくご検討
の上、できるだけ早いうちに全校実施へと進めていただきたいと思います。
さて、学力向上につき、さらに一つご要望がございます。長野県上田市真田町というところがございまして、その例をご紹介したいと思います
が、かつて荒れていた学校が、あることを徹底することにより落ちつきを取り戻し、学力も全国平均を大きく上回ったということでございます。それは小・中学
校とも学校給食をほぼ100%米飯にし、和食を中心にしたということでございました。給食は、堺市は小学校しかありませんが、かつて米飯は週5回のうち
1.4回だったのが、美原町との合併を機に2回へとふやされましたが、文部科学省が推奨する3回にはまだ届いておりません。上田市のうち真田町は、小学
校・中学校ともにほぼ5回が米飯ですが、それ以外の地域も週3回は米飯を確保しているということでございます。
米飯と和食の回数がふえると子どもが落ちつくというのは、どうやら相関関係があるというふうに言われております。ちょうど4月から輸入小
麦が30%値上げされるということから、今までは米の方がパンより高くつくからという理由で見送られてきた米飯でございますが、4月からはパンと値段が変
わらなくなります。ぜひ、この機会に、落ちついた学校にすることと、学力向上のためにも米飯の回数を2回から3回ヘふやしてほしいと思います。
以上ご要望申し上げて、この質問は終わります。
次に、学校教育における武道の取り組みについてですが、平成24年4月から、すべての中学校1・2年で武道が必修となることは決まってお
ります。あと4年しかありません。武道を中学生に根づかせるためには、この4年間に十分な準備が必要でございます。武道を学校教育に必修として取り入れ、
子どもたちに根づかせるためには、武道場などの施設を整備すること、優秀な指導者を確保することとして、適切な予算をつけることということでございます。
現在の堺市における武道の実施状況は、ご答弁のとおりで、武道は現在なきに等しい状況でございます。施設面では、堺市は中学校43校中6校にしか武道場が
なく、武道場があったとしても、実際武道に使っているのは3校にすぎません。
参考までに大阪市ではどうかといいますと、大阪市には、中学校が129校ございますが、そのうち117校に武道場があり、武道に対する取
り組みという点では、堺市との差は歴然でございます。現在は、武道は中学校でダンスや球技などとの選択制でございますが、堺市には武道を選択する学校はほ
とんどありませんが、大阪市では多くの学校が武道を選択しているということです。
また、堺市の中学校では、武道系のクラブも少なく、中学校43校中、剣道クラブは13校、柔道クラブは5校にすぎません。授業でやらず、
またクラブもなければ、子どもたち、生徒たちに武道を知る機会がないのも当然でございます。このようなことが現状でございまして、このような状態では、た
とえ武道をしたとしても、形だけで根づくことはないと予想されますし、文部科学省が武道を必修することにより、期待をする効果を上げることはできないと思
います。まず、施設が必要でございます。4年間で残り37校に武道場を設置することができるのかどうか、また指導者を確保することも急務でございます。す
べての保健体育教員は武道の基礎・基本を指導できるとのことでございますが、その場しのぎでは身につくことはございません。今から人材を育成するか、外部
指導者を確保していくことが不可欠でございます。施設面、指導者、両面とも今から準備を進めていかなくては、到底4年後には間に合わない。特に施設面は多
額の費用がかかるため、財政とも十分に協議の上、進めていく必要があります。
さらに、中学校に武道が根づいたとしても、堺市には武道館がなく、武道の核とする施設がありません。サッカーのナショナルトレーニングセ
ンターには、約67億もの巨費が投じられると聞いております。武道は国家的に推進していくことが決められたのでございますから、ぜひ、核とする施設、堺市
武道館の建設もご検討いただきたいと思います。
以上ご要望を申し上げて、この質問を終わります。
最後に、百舌鳥古墳群の世界遺産登録についてですが、ご答弁の中で、我が国のみならず、人類全体の遺産であるとの認識がございました。私
もそのように認識をしております。建造物としての価値だけを考えるならば、ピラミッドや秦の始皇帝陵、また他の世界遺産となったすばらしい建造物は数々ご
ざいます。それでは、これらの建造物を超えて人類の遺産だと感じるのはなぜか、仁徳天皇が崩御されたのは西暦399年、履中天皇が崩御されたのは西暦
405年とされておりますが、そのちょうど1600年後の1999年、2005年に天皇・皇后両陛下が仁徳天皇陵、履中天皇陵に行幸されました。ともに
1600年という記念に行幸されたのであります。私もこの2005年のときには、身近にお迎えしたことを覚えております。
我々日本人には、このような光景はなじみの深いことであり、特段の驚きを持って見るわけではございませんが、例えば次のような光景を見た
としたらどうでしょうか。仁徳天皇や履中天皇が活躍された時期は、まだヨーロッパではローマ帝国がありました。もし、ローマ帝国が現在も続いており、現在
のローマ皇帝が1600年前のローマ皇帝の墓にお参りしている姿を見ることができれば、それは奇跡と思うことだと思います。このように1600年前の天皇
の陵墓、1600年後の天皇がお参りされるのは、世界に日本しかありません。このことが世界にたった一つしかない普遍的な価値であると私は思います。
百舌鳥・古市古墳群には、第14代仲哀天皇陵、第15代応神天皇陵、第16代仁徳天皇、第17代履中天皇陵、第18代反正天皇陵、第19
代允恭天皇陵、第21代雄略天皇陵、第22代清寧天皇陵、第24代仁賢天皇陵、第27代安閑天皇陵の10の天皇陵が含まれております。そのすべての天皇が
現在の皇室につながるわけであり、我々はその10の天皇陵などの皇室財産を含む百舌鳥・古市古墳群を世界文化遺産に登録しようとしているわけであります。
さて、このようなことを前提に文化庁に提出されました世界遺産暫定一覧表記載資産候補提案書を注意深く読んでみますと、考古学等の学術的見地からの書面づくりということも理解はしておりますが、幾つかの点で疑問があります。
まず、10の天皇陵が含まれているにもかかわらず、天皇という言葉が全く使用されていない。また、仁徳陵、応神陵、履中陵などの巨大古墳
の被葬者をそれぞれの天皇とせずに、中国の歴史書を引用し、倭の五王の墳墓や倭国王墓などとしているところであります。陵墓である限り、どなたが埋葬され
ているのかは、非常に重要なことです。現に天皇皇后両陛下が行幸される陵墓を指して、倭の五王の墳墓とするのは、幾ら学術的見地からの記載とはいえ、疑問
の残るところであります。
今回は、この提案書は学術的見地から世界文化遺産を評価する意味で文化庁に提出する書類ということですので、これ以上深く追及はいたしま
せんが、以後の皆様方のご認識を見守ってまいりたいと思います。特に10代の天皇陵を世界遺産に登録していこうとするのでありますから、皇室のご尊厳には
十分に配慮されることをお願い申し上げたいと思います。
さて、以上の指摘はあるものの、私は民のかまどから炊煙の上がらないのを見て民の生活ぶりを心配し、税の免除を行うなど、聖帝としての誉
れの高い仁徳天皇のご陵墓を初めとする百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録は大変喜ばしいことと思っております。昨年9月の文化庁への提案は、暫定リス
トへの提案ということですが、暫定リストに記載されてからユネスコへの本申請までには、各課題の検討対策などを講じる必要があり、今までの例によると、5
年から10年ほど要しているとお聞きしております。その間には、古事記、日本書紀で述べられているように、民衆の幸せを第一に考え治世を行った仁徳天皇の
お話なども、堺にゆかりの偉人の1人として教育の見地からも伝えていく場を検討していただくなど、皇室の尊厳を高めるように、事業を推進していただきたい
と思います。
このような事業を推進していくことにより、連綿と続く我が皇室に対する理解と尊敬が深まるとともに、仁徳天皇陵に代表される百舌鳥・古市古墳群の普遍的価値が世界の人々にも伝わると思います。
現在も世界では戦争やテロが絶えず、また民主主義を否定したり、言論の自由や信教の自由を認めず、自国民を疲弊させ、国民を大切にしない
国々があります。このような中、決してこの世界が平和ではないという中、聖帝の誉れの高い仁徳天皇の陵が世界遺産に登録されることは、すがすがしい風を世
界に吹かすことになると、このように思います。世界が争いに疲れ、疲弊していく中、仁徳天皇の精気に触れようと、世界じゅうから平和を求め、堺にその陵に
お参りに来ることもあると思います。
私は、ご皇室の尊厳と陵墓の静安を守るということを大前提とした上で、皆様方には、仁徳天皇陵を初めとする百舌鳥・古市古墳群を世界文化遺産に登録することは、世界の平和につながるという矜持を持って、着実にこの事業を進めていただきたいと思うわけでございます。
以上、ご指摘も申し上げましたけれども、十分意を酌んでいただきまして、進めていただきたいと思います。
以上をもちまして私の大綱質疑を終了させていただきます。ありがとうございました。
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