◆水ノ上 委員 皆さんおはようございます。プロジェクト堺の水ノ上で
す。私は今回文教委員会にまた所属させていただいて、実に7年目となります。7年間続いて教育問題に携わらせていただくということは、教育問題は非常に多
岐にわたって課題が多いということで、ほかの委員会もあるわけですけれども、まず教育のほうを皆さんと一緒に議論していきたいという思いから、ことしも1
年間お世話になろうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日は都合どおり1点、皆様方にご質問いたします。それは教科書採択でございます。中学校の教科書採択、4年前もこの場で皆
様方と大いに議論をさせていただきました。教科書採択は4年に1度あるわけですけれども、本年はその年ということで、合わせてことしも採択についてご質問
させていただきたいと思います。
4年前と変わったことはと言いますと、この間に教育基本法が改正されたということと、そして採択者である教育委員の方々が変
更されたと。前回4年前は、教育長初め5名の教育委員の方が選定されましたが、そのうち3人が抜けられて、新たに4名の教育委員の方がなられて、今回6名
で採択ということになります。本日6名の教育委員の方のうちお2人がお休みのようでございまして非常に残念なのですけれども、日程的にも非常に厳しい中で
採択をしていただくと、4年前もそうでしたが、非常に激務の中を、堺の子どもたちによりよい教科書をということで、これから皆様方にご尽力いただくわけで
ございます。その参考になればと思いまして、本日も質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まず最初に、教科書採択の仕組みと今年度のスケジュールについて概要をお聞かせいただきたいと思います。お願いします。
◎
浦部 教務担当課長 教科書の採択につきましては、採択権者である本市教育委員会が、教科用図書選定委員会を設置しております。選定委員会は、専門的な
調査研究を行うために種目ごとに調査員を置き、その調査員は採択基本方針に基づき、専門的事項をそれぞれの種目ごとの観点から調査研究し、選定委員会に報
告をいたします。選定委員会では、調査員からの調査研究の報告について、改めてさまざまな視点からの検討を加え、教育委員会に意見書による報告をいたしま
す。そして、教育委員会は、選定委員会の意見並びに教育委員独自の研究をもとに協議し、採択をいたします。
今年度につきましては、6月に調査員が調査研究をし、7月3日及び7月6日の選定委員会を経て、7月16日の教育委員会で採択を決定する予定となっております。以上でございます。
◆水ノ上
委員 7月16日の教育委員会で採択ということですので、ちょうど1カ月後の教育委員会で教科書が採択されるということでございます。この時期にこうい
う質問をさせていただくのは遅いか早いかわかりませんけれども、最後お決めいただくのは皆様方ですので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
今年度の教科書採択について、例年と変わったところがございますでしょうか。採択の仕方についてお聞かせいただけますでしょうか。
◎浦部 教務担当課長 中学校の教科書につきましては、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令に基づき、本年度が採択がえの年に当たっております。しかし、社会、歴史的分野以外の種目につきましては、新たに検定を経たものがございません。
今年度は、全種目について平成17年度の調査研究の内容を活用しつつ、新たな調査研究の観点として、知識を活用して問題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を培うことができる内容となっているかを加えて、調査研究して採択を行ってまいります。
なお、中学校の新学習指導要領は平成24年度から全面実施されることから、次回の中学校の教科書の採択がえは、平成23年度に行うことになっております。以上でございます。
◆水ノ上
委員 中学校の新学習指導要領が平成24年度から全面実施されるということで、今回の教科書採択におきましては、新たな検定を経たのは歴史的分野の1つ
の教科書だけということで、そういう時期的なものがあるので、前回みたいにすべての教科書が検定を経た上で調査されるということではありませんので、その
点今回はゆっくり、そういう変わったところだけご議論いただけるチャンスかなというふうにも思うわけでございます。
今ご答弁ございましたけれども、平成17年度の調査研究の内容を活用しつつというふうにありますが、そのときの選定資料は4年前のものをそのまま流用するのでしょうか。歴史的分野における調査研究について、あわせてお答えいただけますでしょうか。
◎
浦部 教務担当課長 中学校社会の歴史的分野につきましては、今回検定を経た教科書1社を加えて全発行者について調査研究をいたします。なお、観点につ
きましては、採択の基本方針に基づいて大阪府教育委員会作成の教科用図書選定資料を参考に作成をしております。以上でございます。
◆水ノ上 委員 今のご答弁では、今回についてもすべて調査研究を行うというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
◎浦部 教務担当課長 そのとおりでございます。以上です。
◆水ノ上 委員 今先ほど歴史分野における調査研究の観点というふうな話がございました。その観点について、どういう観点から調査されるのでしょうか。お答えいただけますか。
◎
浦部 教務担当課長 中学社会歴史的分野において調査研究をする観点といたしましては、興味関心態度、内容構成、基礎的基本的な理解、我が国の歴史に対
する愛情と国民としての自覚、地域や生徒の実態、人権尊重、発展的な内容の7つの観点に加えまして、新たな観点であります思考力、判断力、表現力等の育成
の合計8つの観点となっております。以上でございます。
◆水ノ上
委員 1つ加わって8つの観点から調査研究をするということでございましたけれども、先ほど冒頭で申し上げたとおり、今回の検定に関しては大きな変更点
は、その間に教育基本法の改正があったということでございまして、この教育基本法の改正が今回の教科書の採択、特に歴史分野の採択にどのような影響を及ぼ
すのかということをお聞きしたいと思いますが。
◎浦部 教務担当課長 改正教育基本法を受けて改訂された学習指導要領社会歴史的分野の目標の中に、我が国の歴史に対する愛情を深め国民としての自覚を育てると示されております。
既に本市といたしましては、我が国の歴史に対する愛情と国民としての自覚といった観点を設定しており、8つの観点に基づいて公正に調査研究してまいります。以上でございます。
◆水ノ上 委員 前回4年前の検定のときも、今ご答弁いただいた、我が国の歴史に対する愛情を深め国民としての自覚を育てるということが大いに議論をされました。私も議事録を見たり、皆様方の議論もお聞きしたりいたしまして、それは聞いてまいりました。
さらに今回、教育基本法によって明確にそういう文言が、国を愛する心というのが入ったわけで、よりこういうところが歴史を通じて国に対する誇りを持つ、または国に対する愛情を持つということが求められているのだというふうに思うわけであります。
4年前に教育委員の皆様方にご選定いただいた歴史教科書は、東京書籍の歴史教科書でございました。その東京書籍の歴史教科書を数日前にま
た取り寄せまして、一回ゆっくり読んでみました。数年前も読んだのですけれども、今回また読んでみまして、どういうところが私から見て問題かということを
ちょっとここで申し上げたいというふうに思います。
まず、この東京書籍の歴史教科書には、神話というものが入っておりません。神話というのは日本人としての豊かな感受性をはぐくむ部分であ
りまして、それを教えることは非常に重要だと思います。そういう観点が入っていない。また、聖徳太子のところで、小野妹子が遣隋使に派遣されたときに有名
な「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙なきや」というような、昔でしたら必ず教科書に入っていたようなことがなくて、単に朝貢外交をして
いたような書き方がされています。この時代、華夷秩序の中で、日本が中華の冊封体制から抜け出して独立をするということを決めた、日本の一大転換点であり
ました。そういうところの観点がないのかなというふうに思います。そういう観点を日本人が持つということも、今の時代大事かなというふうに思うわけであり
ます。
また、この教科書は、人物の説明が少ないように思います。歴史というのは人がつくるわけでございまして、人の活動、また人を通じて親しみ
を持ったり、さらに深く興味を持ったりするのでございます。事実の羅列ではなくて、人物をもっと深く書くほうが私は教科書としていいのではないかというふ
うに思うわけです。4年前に私は確かそのとき課長だった石井部長にこういう質問をしました。この教科書の中で、たった一人だけ英雄として言葉で表されてい
る人物がいますけれどもご存じですかという話をいたしました。この中で英雄として紹介されているのは、秀吉の朝鮮出兵のときに韓国側の将軍の李舜臣だけが
英雄として、英雄という言葉を用いて紹介されているわけであります。それはこういうふうに書かれています。李舜臣は朝鮮を救った英雄として現在も韓国の各
地に像が建てられています、というふうに紹介されております。朝鮮にとっては英雄かもしれませんけれども、我が国の中学校で教える教科書で英雄視するもの
かどうか。我が国には世界的な英雄、例えば日露戦争のときの東郷平八郎や乃木希典がおります。この方々は日本を救った英雄、また日本がロシアに勝つことに
よって多くのアジア、植民地の方々に勇気を与えた英雄として、世界中の教科書に載っている方でございます。しかし、日本の教科書には載っていなくて、日本
のこの東京書籍に載っている英雄というのは李舜臣だけである、これが日本の教科書にとってふさわしいのかどうか、このようなことを思いました。
また、日清・日露戦争の書き方では、なぜ日清・日露戦争が起こったかということが明確に書かれていない。まして日露戦争に至っては、こう
いう書き方をしています。日本は1902年にイギリスと日英同盟を結んでロシアに対抗し、戦争の危機が迫ってきました。何か日英同盟を結んだことによっ
て、戦争を引き起こしたような書き方がされているわけであります。
また、韓国・朝鮮の書き方については非常に問題点が多くて、例えばこれを読みますが、韓国の植民地化という欄があります。日露戦争のさな
かから、韓国は日本による植民地化の動きにさらされていきました。1905年には外交権が奪われ、1907年には皇帝が退位させられ、云々かんぬんとあり
ます。また、1910年、韓国は日本に併合されました、というふうにあります。どこかおかしいと思いませんかね。内容ではなくて、韓国はということで、こ
れは韓国が一人称なんですね。例えば併合についても、1910年、日本は韓国を併合したとか、日本が1905年に外交権を奪ったとかそういう書き方が、よ
くも悪くも歴史というものは、いいか悪いかあると思いますけれども、日本の歴史である以上は日本が第一人称で書かれるべきが、こういう朝鮮や韓国になれ
ば、朝鮮はどういうふうにされました、韓国はどういうふうにされました、という書き方が非常に目立つのです。これが日本人の学ぶ教科書として必要かふさわ
しいかどうかということも疑問に思ったわけであります。
また、前にもこれは申し上げましたけれども、社会主義革命という欄があります。ロシア革命ですが、こういう書き方をしています。ロシア革
命は資本主義に不満を持った世界の人々に希望を与え、ドイツでも社会主義者たちが立ち上がりましたが鎮圧されました。こうしたロシア革命の影響が及ぶこと
をおそれた日本・アメリカ・イギリス・フランスは、シベリア出兵によって革命政府に干渉しました、というふうに書かれています。社会主義に希望を持って書
かれているんですね。一方ファシズムに関しては、非常に痛烈に書いています。ファシズムもこのときの共産革命も両方とも全体主義で、人類に非常に大きな災
いを起こしたということは事実であるのにかかわらず、こういう書き方がされています。
最後に、太平洋戦争が終わったとき、日本の敗戦によって東南アジア諸国や朝鮮、台湾などの植民地は解放され、独立に向かいました、という
ふうに書かれております。独立解放に向かったのはそうですけれども、日本が戦わなければ果たして独立解放できたか。アジアに限らず、世界中が欧米諸国の植
民地でした。その中で戦える国というのはわずかしかなかった。そのうちの国の一つが日本でありました。しかし、日本が負けたから植民地が解放されたわけで
はなくて、実態は日本が戦ったから植民地は解放されたというふうに私は思うわけであります。いろいろ考え方はあると思いますけれども、かいつまんで幾つか
ここ数日読んでみまして、こういうところは疑問だな、おかしいなというところを申し上げましたけれども、こういうところもぜひお考えいただいて、議論の参
考にしていただきたいと思います。
今回、自由社が新しく歴史教科書をつくったわけですけれども、自由社の新しい歴史教科書は扶桑社の新しい歴史教科書を受け継いだ形で改正
されてつくられました。これは市販本でございます。これも分量が多いのですべては読んでおりませんし、一々これはここがいいよというようなつもりはござい
ません。これは教育委員の皆様方がよくごらんいただいてご判断いただくことですから、それについては申し上げませんけれども、ただ申し上げたいことは、4
年前から今回の採択に関して、教育基本法が変わることによって変更されたのはこの教科書だけということですね。ほかは4年間、4年前と同じ教科書が採択の
基準となっております。それはここで申し上げたい。そのほかに前回の採択時に教育委員の皆様方が扶桑社の教科書において、いろいろ批判、注文がありまし
た。その点はどうかと言いますと、私から見れば、おおよそ改善されているというふうに思います。
例えば、人々の暮らしに関する記述が少ないという扶桑社の本に対する批判がございました。これを読みますと、各単元に女性を中心とした暮
らしが非常に書かれておりまして、そういう点からも前回皆様方が疑問視されたところは直っているのかなというふうに思います。また、戦争賛美や侵略賛美と
いうことが一部言われておりますけれども、読む限り客観的な事実をしっかり書かれておりまして、賛美することもなく、また美化することもない記述に終始し
ているというふうに思います。また、書かれた著者も歴史の教科書の役割は賛美することでもなければ卑下することでもないというふうな立場から書かれている
ようでして、それはそんなふうに思いますので、そういう点も勘案してゆっくりご議論いただきたいと思います。
ご答弁は求めませんけれども、以上の点をご参考いただいて、実質今回の採択は4年前から今回のうちに変わったのはこの歴史教科書1社だけ
ですから、実質は東京書籍のほうがいいか、それとも変わったこの自由社のほうがいいかということになると思います。ですから、横に並べていただいて、ゆっ
くり議論いただいて、どちらが日本人として、また堺の子どもたちが学ぶ教科書としてふさわしいかということをご議論いただきたいと思います。
最後に、この教科書採択の採択権者は教育委員の皆様方でございます。特に教育委員会の委員長にはご苦労をかけると思いますけれども、4年
前と違って今回教育基本法が改正された後の採択でございまして、採択者として一言、今回の改正基本法の趣旨を踏まえた教科書採択についてご意見をいただき
たいと思います。
◎阪之上 教育委員会委員長 今お話がございましたように、4年前いろいろ委員会の中でも、この歴史問題については議論が重ねられたところでございます。また採択後も委員のほうからもいろいろお話がございました。
この4年間の間に社会の情勢も大変大きく変わってきておるところでございますし、ご指摘のように新しい教育基本法というもの
の中に新しい項目も付け加えられたところであろうかと思います。私どもはこういうことを踏まえて、今回のこの歴史問題、おそらく今回の教科書選定におきま
してはこの歴史問題が焦点になろうかと思うのですけれども、これを議論するに当たりまして、文部科学省の通知による教科書の内容についての十分な調査研
究、採択の公正確保、開かれた採択の推進に基づいて十分議論して、これまでも採択してきたと思いますし、今年度もそのことを維持してやってまいりたいと思
います。
中学校の採択につきましては、ご指摘がありましたように教育基本法が改正されて今回が初めての採択となります。改正基本法の
趣旨を踏まえて、採択基本方針に基づき十分な調査研究を通じて、教育委員会の判断と責任において、公正かつ適正に教科書を採択してまいる所存でございま
す。以上でございます。
◆水ノ上
委員 教育委員長よりご答弁いただいて、この1カ月間非常に短い期間ではございますけれども、十分にご議論いただいて、堺市の子どもたちのためによりよ
い教科書を届けていただきたいと思います。教科書は子どもたちが学ぶ手段で、それから歴史なりすべての評価の窓が開かれていきます。教科書を選ぶというこ
とは、教育委員の皆様にとって非常に大きな役割の一つでございますので、十分ご議論いただいて、4年前の議論もございますけれども、この間に教育基本法は
変わり、委員さんが変わり、また新たな議論もあると思います。どうか自由闊達な議論の上でご採択いただけますようお願いを申し上げて、私の質問を終了いた
します。ありがとうございました。
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